研究課題/領域番号 |
17K03441
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
奥村 正雄 同志社大学, 司法研究科, 教授 (30265532)
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研究分担者 |
緒方 あゆみ 中京大学, 法務総合教育研究機構, 教授 (40535390)
川本 哲郎 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (60224862)
洲見 光男 同志社大学, 司法研究科, 教授 (90241124)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 犯罪被害者 / 精神障害犯罪者 / 知的障害犯罪者 / 刑事責任能力 / 損害賠償命令 / 被害者参加制度 |
研究実績の概要 |
Ⅰ本研究の目的は、例年、全犯罪の検挙率に占める精神障害者、その疑いのある者1%に過ぎないが、放火の約20%、殺人の約10%を占める点で放置できず、刑事責任能力の否定に伴って生じうる被害者等の権利・利益の擁護と、精神障害犯罪者・知的障害犯罪者の刑事手続上の権利・義務に係る各人権規定の保障との調整・バランスが必要であろう。そこで、検討を要する点として、第1の柱は、被害者等の損害回復の問題である。、損害賠償について、精神障害犯罪者・知的障害犯罪者が刑事責任を否定されたことに通常伴う民事責任の否定により被害者等が受ける不利益を補填する方策は何か。第2に、平成19年の刑訴法の一部改正により採用された被害者参加制度により、被告人が健常者である場合に被害者等に認められることとなった被告人質問や証人尋問が困難であること、これに対し第3に、被疑者が精神障害者・知的障害者である場合には供述弱者に対する刑事手続上取調べの可視化対策が講じられるようになっているが、こうした被疑者の人権保障の推進が被害者等の権利利益の擁護に反するかが問われる。しかし、このような問いかけ自体がおかしく、被害者等の正当な権利・利益等は、被疑者・被告人が刑事手続上の権利の保障が前提となる。 本研究の第2の柱は、精神障害犯罪者・知的障害犯罪者の処遇のあり方である。結論から申せば、被害者等が既に負わされた精神障害・知的障害に起因するとして、刑事責任が否定された場合、検察官の請求により、被疑者・被告人が自傷他害の恐れがある判断した場合には措置入院の対象となる。このシステムは、正式鑑定により当該犯行が精神障害・知的障害に起因するという理由で無罪の言い渡しを受けた時も同様である。指定された精神病院で医療保護の対象となっても、自傷他害の恐れが消滅すれば、社会復帰が可能となった判断され、被害者等への報復の機会の縮小が期待できる。
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