研究課題/領域番号 |
17K03443
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 周平 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10520306)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 危険責任 / 社会生活上の義務 / 製造物責任 / ドイツ法 |
研究実績の概要 |
1 本研究課題は,物の危険に起因して損害が生じた場合の責任のあり方について解釈論的・立法論的な検討を加えることを目的とする。平成29年度は,ほぼ年度を通じて,フンボルト大学ベルリン(ドイツ)で在外研究を行っていたことから,研究課題に関連するドイツ法の状況を調査することが主たる作業となった。とりわけ,危険責任および社会生活上の義務に関する基礎的検討を行い,その成立史と理論的基礎に加え,関連する個別の規定の要件・効果を確認した。 2 以上はいわば総論的な作業であるが,これと併行して,各論的な問題についての検討も進めている。今年度は特に,製造物責任に関する検討を行った。そこではまず,ドイツ法およびヨーロッパ法を検討素材とするという研究計画に従い,欧州司法裁判所の判決(欠陥の疑いはあったが,その存在を最終的に証明できなかった場合に,欠陥を認定することができるかどうかが問題になったケース)を扱う研究報告を行った。さらに,この研究報告を基礎として,同判決およびそれと関連するドイツ連邦通常裁判所の判決(製造物の欠陥を除去するために支出された費用の賠償が問題となったケース)を紹介・分析する論文を公表した。これらの問題は,まだわが国で実際に問題にはなっていないものの,建物の設計・施工者の責任に関する最判平成19年7月6日(民集61巻5号1769頁)とも接点を有することから,その理論的・実践的意義は小さくないと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題に関連するドイツ法の状況(特に危険責任に関わる議論)については,今後日本法への示唆を得ようとする際の課題を残すものの,ともかくも一通りの調査を行うことができた。また,各論的課題として,製造物責任に関連するドイツ・ヨーロッパの動向の一部を検討し,論文の公表に至った。これらの成果に鑑み,「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の研究計画に従って検討を進める予定である。ただ,ドイツ法の議論は,いくつかの論点で必ずしも決着を見ないまま膠着状態に陥っているように見えるため,そこから新規性のある形で日本法への示唆を得るためには,さらに外在的な視点の導入が必要であると考えられる。この点については,比較法的(さらに学際的)な観点から検討を進めるとともに,現在の滞在先であるマックス・プランク外国私法・国際私法研究所(ハンブルク)において他の研究者と意見交換を重ねることにより対応を図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年2月まで滞在していたフンボルト大学ベルリンの図書館の蔵書およびデータベースが非常に充実しており,それによって研究に必要な資料のかなりの部分をカバーすることができたため,経費の節減が可能になった。 平成29年度の残額については平成30年度の予算と合わせて,在外研究から帰任した後の研究環境の整備と,近時の日本法における議論状況をカバーするための資料収集に使用する予定である。
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