研究課題/領域番号 |
17K03448
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
青木 浩子 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (50301817)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 流通市場での虚偽記載責任 / 金商法21条の2 / 損害論 |
研究実績の概要 |
2019年度は2018年7月に死去した父についての残務整理のほか、体調不全のため、2018年度にひきつづき予算を一部残し次年度使用をお願いすることとなった。
様式S-1-8研究目的②の(1)責任根拠(2)大衆化の双方に係る金商法21条の2適用問題につき(昨年度の研究実績概要の(2)参照)、論稿を2つ発表した。この条文の主要な要件として「重要な事項」「過失」「因果関係」「損害」があるのだが、相互に連関しており、裁判例も複雑なため、とにかく情報処理に時間がかかり、成果をすぐには出せない状態である。しかし、とくに「損害」および「因果関係」については現在仕掛り中の論文が2つあって、最終年度である本年にある程度の完成成果を示すことができるのではないかと思っている。ただし、この論文が影響するであろう判決がおそらく2020年度中にはでないので、引き続き研究を進行していく所存である。
2019年度に発表した論文1「虚偽記載の存在を疑わせる報道と金商法21条の2第1項ただし書きの拡張」は、同条要件のかなめである「過失」問題を研究する際のスピンオフ的な論稿であり、原告投資家側が虚偽について察知していることが損害賠償請求に影響するかを検討したものである。従来の学説の多くは影響しないとしているが、これに対して理由の検討と判例整理とを通じて別の結論を提唱した。 論文2「フォルクスワーゲン社の排ガス不正関連争訟の概観」は過失どころか故意そのもので虚偽記載を重ねるドイツの企業の行動および訴訟での言い分を(文書のみならず実地での視察も行い)検討することにより、いわばin vitroでは考えられない事実についてどうアプローチすべきかの探索的な研究を行った(そのため広範囲におよび企業統治に関する研究を行っていたがこの論文にはその成果は直接には出されていない)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予想していた目的のうち(2)大衆化に関連する課題 については予定していたもののうちできるものは完成し、事情が変更する等で予定どおりに進まないものはそのままにしており、その意味では遅れはない。(1)の責任根拠については研究を金商法21条の2の解釈局面に据えて鋭意進行中ではあるが、とにかく複雑な領域であるため論文の形でのアウトプットがままならない状態でいる。無理に検証不足のため発表内容の取り消しをせまられるおそれがあるので、時間を取りたいと思うが、その分論文の発表が遅れることになる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年の(1)の電子マネーについてはこれ以上は(事情の変更がない限り)行わない予定である。(2)金商法21条の2の解釈適用についての論文を、裁判で問題になりそうな順に時間を優先投入して完成していきたい。(3)海外との情報交換は比較的すみやかにおこなえていたが、今年は出張はcovid-19のため平年より難航が見込まれる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年、家族の介護で研究が遅れ、未使用額が出ました。今年は多めにつかいましたが、それでもまだ消化していないので補助事業期間内でこの未使用額を使用したいと思います。 使用計画として海外渡航は困難が予想されるため(1)これまで通り書籍を中心とした使用、(2)クラウド使用での情報の保存、につき科研で認められる範囲で使いたいと考えております。
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