2022年度は前年度実績概要で見通したように論文発表が重なっている(3点。いずれも国内訴訟に係るもので損害と因果関係の認定方法、特に口頭弁論終結時に虚偽記載公表前価格にまで回復している場合の損害の考え方について論述する)。そしてコロナ禍(による特に裁判の遅延)を理由に2回の延長をお願いしたが、本年度で本研究(金融商品販売における民事責任)を終了し実績報告することとした。
国内において、研究の主眼とする株式会社東芝に対する訴訟が膠着し、主な訴訟は未だに継続中であるが、周辺の小型個人訴訟で大型訴訟への理論的示唆となりそうなものが2件でたため、それらにつき因果関係の点を中心に研究し、裁判所の理由付けが分かれている箇所につきその理由と今後とるべき方向とについて指摘した(そのスピンオフとして新型コロナワクチンにつき接種と後遺症との因果関係認定に関する世界保健機関WHOマニュアルの抄訳と解釈も行った)。なお証券金融商品あっせん相談センターFINMACの理事と、日本証券業協会JSDA規律審査部WG委員に就任して、研究で得られた知見を踏まえて発言している。 海外研究については渡航困難のため実施しなかったが、フランクフルト大学ベルツ教授との研究計画につき相談中である。
研究全体としては前半で電子化した金融の問題を、後半で金融商品販売に関する民事責任理論の問題に重点を置いて遂行した。全体を通貫する視点としてリテール(個人)レベルでの法律解釈につき一定の貢献をなし得たと考える。
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