研究課題/領域番号 |
17K03452
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
芳賀 良 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (00263757)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 緊急差止命令 / 金融商品取引法 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、(1)緊急差止命令の対象の明示性の問題と(2)緊急差止命令の取消し・変更の問題について、比較法的な視点からアメリカ法の判例分析を行った。 上記(1)については「法令遵守」のみを対象とする差止命令の可否が問題となった判例群(例:SEC v. Goble, 682 F.3d 934 (11th Cir. Fla. 2012))を、緊急差止命令の取消し・変更の問題との観点から分析した。緊急差止命令の対象があまりに広範であれば、緊急差止命令を受ける被告の行動の自由を害する。他方、緊急差止命令の対象を過度に限定すれば、禁止される内容に類似する行為であっても緊急差止命令の対象とならないため、緊急差止命令の実効性を欠くこととなる。上記明示性の問題をクリアーするために、法令により禁止されている抽象的な行為を差止命令により禁止するためには、単なる法令遵守を超える再発の危険性が必要であると解されていることが明らかになった。 上記(2)については、差止命令の変更・取消しに関する先例(United States v. Swift & Co.判決)を踏襲したSEC差止命令に係る判例群を分析した。日本法において、緊急差止命令の取消し・変更を生じさせるのは「事情の変更」という事由であるところ、アメリカ法の分析結果により、この「事情の変更」という事由は、法令違反行為が再発する危険性を消滅させる(緊急差止命令発令後の)法令・事実の変化であることが明らかとなった。 平成29年度の上記研究成果は、「金融商品取引法における緊急差止命令の取消しと変更」という論文(横浜法学26巻3号63~92頁(2018年))にまとめて公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した平成29年度の研究計画に概ね沿った研究成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載した平成30年度の研究計画のうち、付随的救済、とりわけ資産凍結命令を中心に判例法を分析し、資産凍結命令について、日本法への示唆を得ることを中心課題とする。差止の既判力一般を論じても、日本法への示唆を十分に得られないことから、上記中心課題である付随的救済と関連する範囲で、差止の既判力についてを分析することとする(この点が研究計画の変更である)。
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次年度使用額が生じた理由 |
前倒し支払請求をして、アメリカの研究分野に関する書籍(最新版)を購入した。その残金が次年度使用額となっている。次年度も、電子データベースの調査結果の真実性を確認するために、研究書籍を購入する予定である。
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