研究課題/領域番号 |
17K03454
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
内田 千秋 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40386529)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自由職業 / 会社法 / 監査法人 / フランス |
研究実績の概要 |
本研究は、フランスにおける「専門職会社」(日本でいうところの監査法人や弁護士法人等)に関する研究を行うことを目的としている。 本年度は第一に、フランスの会計監査役に焦点を当てて、会計監査役会社制度について文献調査を進めた。平成25年度に早稲田大学に提出した博士学位論文(内田千秋「フランスにおける会計監査役の民事責任」)の出版に向けた作業の一部である。 本年度は第二に、日本の公認会計士法のあり方を検討する研究会(会社法・監査論の研究者、監査実務家等が参加しており、研究会名は「公認会計士法の省察と革新」)のメンバーとなった。同研究会では、監査法人制度のあり方も主要な検討事項とされている。 本年度は第三に、社員の監査法人脱退時の持分払戻しと監査法人の商人性に関する東京地判令和3年6月24日金融・商事判例1626号34頁の判例研究に着手した。同判決の争点は、令和2年度課題(フランス専門職と商事会社の許容)および本年度課題(フランスにおける専門職会社の株式・持分の価値評価)に関わるものである。 本年度は第四に、別の研究課題(JPSP科研費19K01366)との関係で、専門職後見人としての士業者の役割(士業法人が法人後見人となる場合を含む)等について理解を深めた。本年度はまた、上山泰=内田千秋「会社法と成年後見法の交錯問題(3)-取締役の欠格条項削除に関する争点を中心に」法政理論54巻1号1-49頁(2021)、内田千秋「(立法紹介)会社法の簡素化ー会社法の簡素化、明確化および現代化の2019年7月19日の法律第744号」日仏法学31号171-174頁(2021)、内田千秋「議決権行使と意思表示等の民法規定との関係ーアドバネクス株主総会決議不存在確認等請求事件控訴審判決ー」金融・商事判例1637号2-7頁(2022)を執筆・公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は文献収集のためフランスへの出張を予定していたが、新型コロナ感染症の関係でフランスに渡航できなかった。仏語文献の収集は、インターネット書店での購入、国内図書館への複写依頼等により行った。旅費の未消化分があることなどから、研究期間を1年間延長することとした。 本年度は、上述のように、日本の監査法人制度の研究に着手する機会を得た。現在の研究の進捗状況に照らすと、本研究期間中に、令和2年度課題および本年度課題に関するフランス法部分の分析を深めることは難しいようにも思われるものの、日本の議論状況を改めて把握することで、今後のフランス法部分の研究をより充実させることができると考える。 また、日本でもフランスでも、他の士業法人(専門職会社)に先行して、監査法人制度(会計監査役会社制度)の導入・改正が行われてきたという歴史的経緯がある。監査法人(会計監査役)に関する研究を足がかりに、他の士業法人等(専門職会社)に関する研究も進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度も引き続き、博士学位論文の出版に向けた作業を行う。会計監査役制度・専門職会社制度に関する法改正および本研究のこれまでの研究成果を踏まえて、博士学位論文の内容をアップデートする。 また、研究会「公認会計士法の省察と革新」では、令和4年度中に、フランスの会計監査役・会計監査役会社制度に関する報告を担当することとなった。他のメンバーによる諸外国の監査法人制度に関する報告もあるため、諸外国の監査法人制度とも比較しながら、日仏の監査法人(会計監査役会社)について考察を深める。 さらに、商法研究会(早稲田大学)では、令和4年度中に、上述の東京地判令和3年6月24日金融・商事判例1626号34頁の研究報告を行うこととなった。日本の他の士業法人とも比較しながら、同判例の分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
文献入手のためにフランスに短期出張することを予定していたが、本年度も、新型コロナ感染症の影響でフランスに行くことができなかった。また、国内の研究会・学会もオンラインで開催されたため、国内旅費の支出もなかった。 令和4年度に入り、国内の研究会・学会については対面開催の動きも見られるため、研究会等が対面開催される場合には国内旅費として支出する。それ以外は、図書購入費と文献複写費に充てる予定である。
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