研究課題/領域番号 |
17K03457
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
池田 雅則 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (20261266)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 流動資産担保 / 集合動産譲渡担保 / 集合債権譲渡担保 / 包括担保法制 / 債務者の経済的危機状態 |
研究実績の概要 |
本年度においては、ドイツにおける債務者再生局面においてABLによる流動資産担保がどのように理解され、利用されているのかなどABLによる流動資産担保の実態を確認するとともに、それら流動資産担保の有する包括担保性がどのように理解され、制御されているのかなどの点についての把握を行うことが計画されており、この目的を達成するために、ドイツにおける現地調査を行ったほか、文献資料に基づく調査・検討を行った。この結果として、なお概括的ではあるものの、ドイツにおける流動資産担保の包括担保性が目的財産の把握の局面にとどまり、実行局面においては、担保把握の先後によって制御されているのではないかとして、今後の検討の方向性についてある程度の示唆を得ることができた。また、あわせて、包括担保性を有する非典型担保がドイツにおいては「非付従的」な担保であることから、この日付従性が担保の効力についてどのような機能を有しているのかを確認する必要があるのではないかとの示唆をも得ることができた。 また、本年度は、早稲田大学大学院法務研究科白石大教授を迎えて、実務かを含めた研究会において、「債権譲渡の対抗要件制度に関する法改正の日仏比較」をテーマとする研究報告を受け、包括的担保手段の1つである債権譲渡に関して、担保把握を第三者にいかにして対抗するのかをめぐる法制度設計のあり方という観点から、包括担保法制への示唆を得ることができた。 さらに、集合動産譲渡担保と所有権留保との競合事例における下級審裁判例(東京高判平成29年3月9日金法2091号71頁)を検討することで、包括担保と個別担保との競合をどのように解決すべきかの具体的な方向性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画においては、包括担保をめぐる利害状況やその法的問題点の精密な把握、ドイツにおける債務者再生局面におけるABLによる流動資産担保の利用実態の確認と包括担保性の理解や関係当事者の利害調整のあり方の調査、さらに平成31(令和元)年度に向けた予備調査などを計画していた。これらのうち、ドイツにおける現地調査や平成31(令和元)年度に向けた予備調査などは、ドイツにおける文献の発行遅延などの影響は一部で受けているものの、順調に進展していると評価しうる。他方で、包括担保をめぐる利害状況やその法的問題点の精密な把握に関しては、若干調査が十分ではない点があるため、これらをあわせて考えると、おおむね順調に進展していると評価できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成31(令和元)年度においては、ドイツにおける海外調査を予定している。この調査においては、ドイツにおける流動資産担保の有する包括担保性とドイツ倒産法制に関する調査を行うことを計画している。 また、わが国おいて流動資産担保について指摘される「生かす担保」との理解がもっぱら実行局面ではなく、設定されてから実行に至るまでのいわゆる平時における担保の持つ機能としての理解であることを踏まえて、仮に「生かす担保」としての理解が成立するとして、実行局面における担保の機能をどのように変容させうるのかについての調査・検討を進めたいと考えている。これは、包括担保法制をどのように構築するのかを考える上での基本的な視座の獲得にあたり、当初の研究計画の一部であり、その具体化であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドイツ法関連文献の入手を計画していたが,本国における出版事情により予定通りの出版がなされなかったために,入手できなかった。次年度,出版予定との情報を得ているので,入手する予定としている。
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