研究課題/領域番号 |
17K03458
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北村 雅史 京都大学, 法学研究科, 教授 (90204916)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 会社法学 / 法人 / 理事 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、交付申請書に記載した「研究目的」と「研究計画・方法」に基づき、営利法人と非営利法人の違いに関する民法学と商法学の文献を収集し、検討した。従来、非営利法人と営利法人は、営利性の違いから、異なる法制度になるものとの前提で制度論が展開されてきたが、平成18年の法人制度改革により、非営利法人である一般社団法人および一般財団法人の機関制度について、営利法人である株式会社の制度が大幅に導入された。その経緯と近時の一般社団法人の実情を踏まえ、営利法人と非営利法人の機関制度は同等であるのが原則であり、両者の制度が異なる場合は、相当の理由がなければならない、という観点にシフトして、制度の比較研究を行った。 その研究成果を、日本私法学会第81回大会(平成29年10月)のシンポジウム「非営利法人に関する法の現状と課題」において、報告者の一人として報告した。報告テーマは「一般社団法人の機関制度の検討」である。このシンポジウムを準備するにあたって、他の報告者やコンメンテーターと複数回の研究集会を持ち、非営利法人法に関する問題点の検証を行った。また、シンポジウム当日には、フロアから大変貴重なご意見をいただいた。このシンポジウムでは、制度比較の大枠のほか、個別論点として、一般法人の監事の役割の重要性、企業集団の内部統制の違い、理事の競業避止義務の意義、といった問題について一定の提言を行った。平成30年度には、シンポジウムの準備会と当日の議論を踏まえて、論点をさらに絞った検討を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非営利法人と営利法人の違いおよび非営利法人の機関制度に関する文献の収集と検討を順調に進めており、日本最大の法律学会である日本私法学会のシンポジウムで報告することができた。シンポジウムの準備会および当日の議論に基づき、非営利法人の機関制度に関する総論的な学術論文の執筆にとりかかり、平成29年末までに脱稿した。 以上のことから、交付申請書の「研究計画・方法」に従った研究を順調に実施できていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、平成29年度のシンポジウム報告、および平成29年度後半に脱稿した非営利法人の機関制度の総論に関する論文をもとに、非営利法人の機関に関する個別論点の検討を行っていく。とくに、コーポレート・ガバナンス論の進展と非営利法人の機関に関する問題に焦点をあて、いわゆる委員会型(指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社)の機関設計が一般社団法人に適合するか、あるいは合同会社型の機関設計が非営利法人に適合するかといった、我が国ではこれまで議論されなかった問題についても、一定の提言を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、大学の個人研究費が(部局内の職務に関連して)一時的(単年度のみ)に増加したことなどから、当該補助金からの支出が、すべての項目について少なくて済んだ。平成30年以降は、大学の個人研究費が元にもどる(29年度より減額する)ため、本研究に関する物品費と旅費を、平成29年度よりも多く支出することになる。とくに、平成30年度は、本研究課題にかかる研究を本格化する年度であるので、物品費・出張費の支出は、平成29年度よりも格段に多くなる予定である。
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