研究課題/領域番号 |
17K03459
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
青竹 美佳 大阪大学, 高等司法研究科, 准教授 (50380142)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 家族の多様化と相続法 / 特別寄与者 / 相続法改正 / スイス相続法改正 / ドイツ相続法 |
研究実績の概要 |
家族が多様化する現代の日本において、相続法制度がどのようにあるべきかを、2018年に成立した改正相続法をもとに、ヨーロッパの相続法と比較検討しながら検討した。 第一に、家族が多様化する中で、法定相続人ではなくても、被相続人と緊密な関係を築いていた者が遺産を取得する可能性を認める立法がどのような展開を見せているかを検討した。日本の相続法改正で導入された特別寄与者の制度は、事実婚配偶者を除いているという点では、スイスの相続法改正法案やオーストリア相続法よりも厳しい対応をみせているということを明らかにした。 第二に、夫婦の財産関係が多様化する中で、これまでの専業主婦モデルが相続法の前提としてふさわしくなくなりつつある中で、共働き夫婦の増加と夫婦の収入格差や家事育児労働時間の格差の残存が混在する状況から、相続時に、実際の夫婦の財産関係に対応した清算を行うことの必要性と正当性を、ドイツの夫婦財産法、相続法との比較検討に基づいて導き出した(青竹美佳「ドイツ相続法における夫婦の財産関係の清算について」家族(社会と法)34号(2018年)40頁)。 第三に、2018年のスイス相続法改正法案において導入されている扶養請求権の規定を、家族の多様化への対応という観点から考察し、日本の改正相続法で導入された特別寄与者の制度では内縁配偶者が請求権者から除かれたのとは逆に、スイスの扶養請求権では、内縁配偶者の保護に主眼が置かれているという状況を確認した(青竹美佳「2018年スイス民法典(相続法)改正法案における家族の変化への対応」阪大法学68巻6号(2019年)43頁)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相続法における家族の多様化の状況を、日本の改正相続法、ドイツ相続法、スイス相続法改正法案、オーストリア改正相続法を比較検討することにより検討することができた。当初の予定では、日本の相続法改正の要綱案、ドイツ相続法を素材として検討することを計画していたが、平成30年度中に日本の改正相続法が成立したため(2018年7月13日公布)、同改正相続法を、家族の多様化への対応という観点から分析することに当初の計画よりも大きな重点を置いた。また、平成30年度中には、スイスの相続法改正法案が公表されたため、同法案において家族の多様化がどのように図られているかを研究することに意義があると考え、研究の対象に新たに加えることとした。
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今後の研究の推進方策 |
相続における家族の多様化がどのように図られているか、またどのように実現するべきかについて引き続き検討を加える。今後はとりわけ2つの観点から検討することを計画している。第一に、事実婚を始めとする、法定相続人ではないが被相続人と遺産を取得するに相応しい関係を築いていた者を相続法においてどのように評価するかという点である。これは、日本の改正相続法で特別寄与者の制度において導入されている。しかし、同制度と並んで、従来の寄与分制度や財産法上の制度に基づく法律構成の可能性も無視することができず、今後も検討を加えたい。第二に、画一的な規定が設けられる傾向のあった遺留分制度において、多様な家族に対応した柔軟な遺留分制度を考察することである。 これまでと同様に、ドイツ相続法、スイス相続法改正の議論、オーストリア改正相続法を比較の対象に検討することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた図書を図書館において利用できるようになったため。次年度においては、①ドイツ法およびオーストリア法の相続法関係の雑誌および研究書の購入、②相続法関係の研究会出席のための旅費に充てる予定である。
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