研究課題/領域番号 |
17K03459
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
青竹 美佳 大阪大学, 高等司法研究科, 准教授 (50380142)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 遺留分制度 / 遺留分法 / オーストリア遺留分法 / 相続法 / 相続法改正 |
研究実績の概要 |
2018年相続法改正によって遺留分制度が家族の多様化にどのように対応しているかを検討した。比較の対象として、2015年に相続法改正を経験しているオーストリアの遺留分制度に着目し、どのような目的のもとでどのような変更が行われたかを検討した。その結果、2015年相続法改正により、オーストリア遺留分法は、被相続人の意思決定を強化すると同時に、一方では遺留分と対立する利益の保護を図り、他方では生活保障や潜在的持分の清算といった遺留分の機能を具体的に考慮する柔軟な遺留分制度を構築していることを明らかにした。そして日本の遺留分制度は、オーストリアの遺留分制度と比較してみた場合に、遺留分の機能を具体的に考慮するという意味での遺留分制度の柔軟化の方向性を同じくしているものの、柔軟化の程度は弱いという結論を示した。家族の多様化への対応するという点では、オーストリアの遺留分法を参考にした遺留分法の解釈が考慮に値するという見解を示したうえで、遺留分侵害額請求権の期限の許与の規定(1047条5項)について、遺留分の機能を具体的に考慮した解釈を提言した。研究成果は、「2015年オーストリア相続法改正後の遺留分制度の特徴」阪大法学69巻3・4号605頁として公表した。 また、2018年相続法改正によって相続法をどのように高齢社会に対応させたかについて、遺留分制度、新設された配偶者居住権の制度および特別の寄与の制度に着目して分析した。2020年3月25日の家族サービス学会(ポーランド・トルン)にて報告を予定していたが、新型コロナウィールスの影響で学会は延期となり、次年度以降に発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、当初から予定していた遺留分制度の研究を進めることができた。学術論文としては、単著「2015年オーストリア相続法改正後の遺留分制度の特徴」阪大法学69巻3・4号605頁を公表し、その他の業績として、共著『民法(相続法)改正のポイント』(有斐閣、2019年)、『論点体系判例民法11[第3版]』(第一法規、2019年)をいずれも遺留分の部分を担当した。 もっとも、研究を進めたものの公表が遅れた部分もある。2018年相続法改正によって相続法をどのように高齢社会に対応させたかについて、遺留分制度、新設された配偶者居住権の制度および特別の寄与の制度に着目した研究については、2020年3月25日の家族サービス学会(ポーランド・トルン)にて報告を予定していたが、新型コロナウィールスの影響で学会は延期となり、公表は次年度以降となる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、引き続き2018年相続法改正後の遺留分制度についての研究を進める。遺留分制度については、3つの点の検討を続ける。 第1に、2018年相続法改正後の遺留分法の解釈論を導く上で参考となる基礎的な考え方を提示し、新遺留分法の解釈の基準を検討する。 第2に、遺留分制度における具体的な問題を取り上げて妥当な解釈方法を究明することである。具体的な問題として、遺留分侵害額請求権が債権者代位の対象になるか否かの問題について、相続法改正前の遺留分減殺請求権と債権者代位の関係についての判例や学説が妥当するか否かを検討する。 第3に、改正相続法における新遺留分制度の意義を明らかにすると同時に、新遺留分制度における問題点を明らかにし、今後のさらなる立法論を考察するために比較法的な検討を行う。これまでに引き続き、現在進行中のスイス相続法改正の議論、2015年オーストリア相続法改正、2009年ドイツ相続法改正における遺留分制度の変化を、日本の相続法改正における新遺留分制度と比較することにより、できるだけ客観的に新遺留分制度を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月25日の家族サービス学会(ポーランド・トルン)にて「日本における高齢社会への相続法の対応」のテーマのもとで研究報告を予定していたが、新型コロナウィールスの影響で学会は延期となり、当該年度に旅費を利用することができなくなったため。
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