研究課題/領域番号 |
17K03459
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
青竹 美佳 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (50380142)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 2018年相続法改正 / 遺留分制度 / 相続法 / 家族の多様化 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、2018年相続法改正において家族の多様化にどのような対応が図られて いるかの問題を検討した。当該年度には、とくに新設された遺産の一部の分割についての民法907条の意義を検討し、多様な家族によりなされる一部分割の様々な背景を分析し、一部分割が残余財産の分割に与える影響を考察した。その成果を、判例批判「遺産分割協議後に発見された遺産の分割の方法」民商法雑誌157巻4号(2021年)828―834頁に公表した。 また、2018年相続法改正により導入された特別の寄与について制度、大きく修正された遺留分制度の意義を、多様化する家族への対応という観点から分析した。共著『新ハイブリッド民法5家族法』(法律文化社、2021年)には、その分析をもとに、遺留分、特別の寄与の章を執筆している。 さらに、多様な家族に対する法的対応の最先端の問題として、同性カップル間での相続法における課題を検討した。同性婚を認めない民法等の規定の合憲性が問題となった札幌地判令和3年3月17日判時2487号3頁の事案をもとに、現行民法上同性カップルが受けている不利益を相続および相続以外の場面について検討し、法改正の必要性、および解釈論上の同性カップルの法的保護の可能性を分析した。その成果を、「同性婚を認めない民法等の規定の憲法適合性」道垣内弘人・松原正明編『家事法の理論・実務・判例5』(勁草書房)101―112頁(2021年)に公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多様化する家族に、相続法がどのように対応しているか、また今後どのように対応するべきかという問題を、2018年相続法改正を素材として検討し、その成果を公表することができた。また、多様化する家族についての新しい問題である、同性カップル間での相続の問題に焦点を当て、同性婚が認められない代わりにとり得る法的対応の意義とその問題点を指摘し、その研究成果を公表することができた。もっとも、これらの成果について研究会や学会等で口頭で報告する機会は当該年度にはなかった。次年度には、学会等での口頭の研究報告をすることで意見交換の場を持ちたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、多様化する家族に相続法がどのように対応しているか、また今後どのような対応を図るべきか、という観点から研究を進めることとする。最終年度である次年度には、特に同性カップル間での相続の問題にも着目し、同性婚を認める立法をする必要性、また同性婚ではない関係について制度を設ける必要性を考察し、さらに事実婚や養子縁組によって同性カップルを法的に保護する可能性とその限界を分析し、その成果を国際シンポジウムにて発表することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染拡大の規制により国際学会、国際シンポジウムがオンラインにて開催されたため、出張旅費を支出することがなく次年度使用額が生じた。次年度は、ドイツで開催されるシンポジウムにて研究報告をする予定があり、海外出張の旅費として使用する計画を立てている。
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