研究課題/領域番号 |
17K03460
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
山下 典孝 青山学院大学, 法学部, 教授 (00278087)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 弁護士費用保険 / 弁護士賠償責任保険 / 弁護士報酬 |
研究実績の概要 |
依頼者が弁護士に対して法律相談又は紛争解決を依頼する際に掛かる費用をてん補する弁護士費用保険に関する近時の裁判例を基に、弁護士報酬の現実の支払要件、弁護士報酬基準に関する日弁連LAC報酬基準に関する評価、同種事件でありながら弁護士費用保険が利用できる場合と、利用できない場合とで、異なる弁護士報酬基準を定めていることの妥当性を検討した論文を研究成果として公にした。 昨年度に続き、弁護士賠償責任保険を巡る免責条項の解釈に関する学説及び裁判例の再構築をすすめた。弁護士が依頼者に対して負っている善管注意義務と自己の程度における管理義務との相違は、故意を判断する場合の判断基準がどういうものを判断基準として考えられているか、また約款の文言における文言解釈においてどのような者を対象として約款解釈すべきと解されているか、すなわち、約款の解釈においては、一般的にその取引社会における一般的な相手方(加入者)を判断基準として想定しており、専門職業人として当該専門職業人として求められる一般的な基準において約款解釈される必要性はないのか、弁護士における過誤の事例毎における内容と免責条項の適用に関する相関関係や、弁護士職務基本規程で求められる弁護士の義務との関係などに関して研究を進めた。研究成果は未だ未発表のままのため最終年度において研究成果を公表できればと考えている。 また依頼者見舞金制度が弁護士賠償責任保険制度に及ぼす影響に関しても研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
比較法的検討が不十分なところがあり、特にカナダの依頼者保護基金との関係の検討が十分に研究が進められていない。
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今後の研究の推進方策 |
弁護士賠償責任保険を巡る免責条項の解釈に関する学説及び裁判例の再構築をすすめる。弁護士が依頼者に対して負っている善管注意義務と自己の程度における管理義務との相違は、故意を判断する場合の判断基準がどういうものを判断基準として考えられているか、また約款の文言における文言解釈においてどのような者を対象として約款解釈すべきと解されているか、弁護士における過誤の事例毎における内容と免責条項の適用に関する相関関係や、弁護士職務基本規程で求められる弁護士の義務との関係などに関して研究を今年度も継続し研究成果をまとめる予定である。 弁護士賠償責任保険における免責条項の解釈が依頼者見舞金制度ができたことによる運用上の変化があり得るか、本来の責任保険の役割や、弁護士職務基本規程との関係に関して引き続き研究を進める予定である。またフランスでの法律職業人の賠償責任保険の運用や、ベルギーでの弁護士賠償責任保険とそれとは別の信用保険制度の相関関係に関して研究を進めることを予定している。 一定の法律分野において弁護士会が弁護士を紹介する場合に信用保証保険を利用して紹介した弁護士に不祥事が発生し、依頼者に損害が発生した場合に、当該保険で損害をてん補する制度設計が提案されているようであり、それとの関係も踏まえて研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年目の残額が多かったことが影響している。日本における状況調査を中心としていたため比較法的研究に十分に時間をかけられず比較法にかかる文献等の入手が進んでないことも理由となっている。
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