民事訴訟法上の不利益変更禁止原則については、審理・判決の両面から、控訴審を限定するものであるという説明が為されてきたが、本研究は、審理面からの限定は、判決面からの限定と独立に機能するものではないことを明らかにした。このことにより民事訴訟法296条1項を根拠に争点レベルでの控訴審の審理対象の限定が働く余地はないことを明らかにすることができたほか、民事訴訟法304条がどのような形で控訴審を限定するものであるかの理解に、不利益変更禁止原則の理解がかかっていることを明らかにすることができた。これは、不利益変更禁止原則の全貌の解明に向けて進むべき研究の方向性を明らかにした、という意義を有する。
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