今年度における研究成果は、ESG を含む持続可能性価値に関する会社のコミットメントにつき、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードの行動主義的要素を活かしつつ、これをより実効性あるものにするにはどうすればよいのか(規制のベストミックス)ということにつき、以下の通り一定の示唆を得たことにある。 (1)持続可能性価値へのコミットメントを会社法上の目的に記すこと/持続可能性価値に対するコミットメントを株主価値の最大化ということに吸収されない併存的な価値として位置づけ、それを会社法に明記してはどうだろうか。その狙いは、そうすることによって、「持続可能性価値にコミットすることは長期的な企業価値向上に資する」という「価値判断」を会社法が明らかにすることにある。つまり、そのことによって、思い切った持続可能性価値に対する会社資源の投資を「妨げている障壁を取り除く」ことが企図される。 (2)会社が目標として掲げる持続可能性価値に関するコミットメントについて客観的調査に基づく事業評価を要求すること/会社が事業全体の中に位置づける持続可能性価値に関して、客観的調査に基づく事業評価を要求してはどうだろうか。それにはサプライチェーンを含む会社事業の総体に対するdue diligenceが含まれる。またそれは絶えず進歩する科学的知見を含み、調査の構成と範囲においても主体的かつ柔軟なものでありながら、同時に検証可能な客観性を併せ持つべきである。 (3)会社が公表する持続可能性価値に関する評価を公正な専門家委員会の検証に委ねること/会社の持続可能性価値に対する評価を単なるリスク・マネジメントにとどめるのではなく、むしろ会社の事業全体に及ぶ経営戦略の一環として独立の評価項目としながら、当該評価を専門家委員会の公正な検証を得た上で、報告書として提出させるということを考えてはどうだろうか。
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