研究実績の概要 |
本研究の課題は“不当利得法に基づく知的財産権保護システムの構築”であり、この課題の意味を簡潔に言えば、不当利得法を用いて"権利の無断使用(知的財産権侵害)"に対する解決方法を探るということである。そこで、本研究においては、“有体物 の無断使用”に関するドイツ判例及びドイツ不当利得法学説(差額説・類型論)を詳細に検討してきた。 本研究の課題が、"権利の無断使用"に関するものであるにもかかわらず、あえて “有体物 の無断使用”に限定して研究したことには理由がある。"有体物の無断使用"の場合と"権利の無断使用"の場合(知的財産権侵害の場合)とは、物 と権利の違いがあるのみであり、問題の本質にほとんど差異がない。そこで、"有体物の無断使用"について蓄積された研究を応用することによって、"権利の無断使用"について適切な解決方法を探ることは、本研究においてとりわけ重要な意義があった。 2023年度は、2017年乃至2022年度の研究に引き続き、“有体物の無断使用”に関するドイツ不当利得法学説(差額説・類型論)を1971年以降の学説に限定した上で、詳細に分析・検討し、“侵害者の 返還の対象は何か”・“侵害者の「使用利益(使用料)」をいかに算定するか”という二つの点を明らかにした。 この課題に関する拙稿「ドイツ不当利得法における使用利益返還論の現状と課題(1)~(3)-飛行機事件判決(BGHZ55,128)以降の差額説・類型論を中心に-」は、すでに広島法学47巻1~3号に連載しており、これらに続く「ドイツ不当利得法における使用利益返還論の現状と課題(4)」も脱稿済みである(広島法学48巻1号にて公表予定)。
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