本研究の成果物は、会社法429条をはじめ会社法上の債権者保護全般に関するものも含まれているが、主として会社法350条に関連する論考である。中でも「中小企業におけるセクハラ・パワハラと会社法350条」水島郁子・山下眞弘編著『中小企業の法務と理論』316-339頁(中央経済社、2018年)以降、同条と民法715条の根本的な違いは何かとの疑念を追究し、会社法350条の本質に関連する検討を続け、その成果として2021年度の日本私法学会個別報告「会社法350条の制度趣旨に関する一考察」やその先行論文において、同条を個人の具体的な不法行為責任なく企業責任を肯定しうる規定との意味を持つものと位置付けた。
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