研究課題/領域番号 |
17K03469
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
牧 真理子 大分大学, 経済学部, 准教授 (60648054)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 事業再生 / 組織再編 / 債権者保護 / 詐害性 / 会社分割 / 事業譲渡 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、経営が破綻状態にある会社が、事業再生の一環で会社分割や事業譲渡を行う場合に、債権者保護と事業再生の必要性の衝突が生じるのではないかという問題を検討するにあたり、事業再生スキームが破産法上の否認権行使の対象となる可能性について、ドイツ法を分析し、日本法の検討を進めた。 第一に、ドイツにおける事業再生と倒産法上の否認の調和の問題に関して、判例および否認権行使の要件のあてはめに関する学説の整理および検討を行った。学説では、事業再生が否認権行使の対象となりうる場合の要件について見解が分かれており、判例上も明確にはなっていない。そして、ドイツにおける会社分割制度では、詐害的会社分割を防止するために、債権者の同意の代替として連帯責任規定が置かれているが、事業再生一般としては、債権者の同意や債権者への情報開示が必要であることがわかった。 第二に、日本においても、会社分割や事業譲渡の詐害性については、ドイツ法の分析結果から、偏頗性、債権者平等の観点から捉えられること、詐害性が問題となりうる場合には事前の情報開示をもとに残存債権者の同意の獲得が必要となりうることを導いた。しかし、情報開示の方法や、残存債権者の同意の具体的なあり方は、今後の検討課題として残っている。 平成30年度の研究成果として、単著『組織再編における債権者保護-詐害的会社分割における「詐害性」の考察-』(法律文化社、2018年)、日本私法学会第82回大会個別報告「詐害的会社分割における残存債権者保護―ドイツからの示唆」がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度はドイツに出張し、資料収集および研究者からの意見聴取を行う予定であったが、所属機関の学内行政の関係で実行できなかった。しかし、当初の研究計画どおり、本研究の中間成果として、単著を刊行し、私法学会の個別報告も行えたため、概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度までの研究をもとに、事業再生において、債権者保護ないし債権者平等がどのように担保されるのか検討する。特に、事業再生ADRでは、手続上の実効性や迅速性が優先され、法律的な構造が十分に明らかにされていないという指摘もあり、そのような私的整理における債権者保護のあり方について検討する。平成30年度は、ドイツにおける事業再生の実際について意見聴取ができなかったため、可能な限り、本年度に実行できるよう日程調整につとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度途中から担当している所属機関の学内行政を大きな要因として、外国出張の日程が調整しづらくなったため、旅費に次年度使用額が発生した。これは、今年度以降、出張日程を適切に計画し実行するための予算とする。
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