本研究は、会社分割や事業譲渡が事業再生のなかでどのように利用されるのか、債権者保護の観点から、ドイツ法を比較対象として検討を行うものである。 令和2年度は、組織再編や事業の譲受けをする場合に発生するのれんの会計処理について検討を行なった。すなわち、のれんの会計処理として、日本の会計基準による償却処理と、国際財務報告基準(IFRS)による減損処理を比較し、減損処理と経営者の裁量の関係について検討した。のれんの減損はキャッシュアウトを伴わない会計上の処理であるが、減損を行なった期は利益が減少し、分配可能利益に影響が出る場合もありうると考えられる。それゆえ、本研究の一環として検討したものである。 IFRSにおける議論では、のれんの償却の再導入が唱えられており、わが国においても、減損より償却の方が望ましいとする学説が有力である。学説上、減損に関する問題点として、機関設計の不備のため、のれんが恣意的に計上される可能性があること、のれんの減損の適正な認識・測定が難しいこと、のれんが過大に計上される可能性があること、計算書類等による情報提供のあり方に課題があることが指摘されてきた。しかし、IFRSに関する会計学の先行研究を参照しつつ分析した結果、減損に関する諸問題点については解決に向けた方向性が示されること、のれんの計上や減損が経営者の裁量により行われることに関する恣意性は、実証研究によると困難な問題ではないとの結論が示されることを確認した。
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