研究課題/領域番号 |
17K03471
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
鶴田 滋 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 教授 (90412569)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 必要的共同訴訟 |
研究実績の概要 |
平成29年度においては、必要的共同訴訟人間の牽制関係に関する研究を次の2点について行った。 第一に、「固有必要的共同訴訟における訴えの取下げと脱退」に関する研究を行い、平成29年6月に民事手続研究会(九州)においてこれに関する報告を行い、その上で、同タイトルの論文を高橋宏志先生古稀祝賀論文集『民事訴訟法の理論』(有斐閣)に平成30年2月に公表した。この研究においては、必要的共同訴訟人間の手続規律に関する日本民事訴訟法の立法史を扱い、とりわけ、大正15年民事訴訟法62条1項および2項の成立史を明らかにした。その結果、現行民事訴訟法40条1項および2項の元となった大正15年民事訴訟法62条1項および2項は、母法国ドイツの立場とは異なる日本独自の手続規律を設けた明治36年草案66条の立場を基本的に踏襲したものであった。それによれば、共同訴訟人の一部の者によるまたはそれに対する訴訟行為の効果は、共同訴訟人全員に及ぶのが原則であり、例外として、共同訴訟人の一部の者による訴訟行為は、それが他の共同訴訟人にとって不利益である限りその効力は生じないとするものであった。この起草趣旨に従うならば、原告側固有必要的共同訴訟における共同訴訟人の一部の者による訴えの取下げは、他の共同訴訟人の訴権を事実上奪う不利益な行為であるためその効力は生じないのに対して(現行民事訴訟法40条1項)、被告側固有必要的共同訴訟における共同訴訟人の一部の者に対する訴えの取下げは、現行民事訴訟法40条2項によりその効力を生じるが、共同被告の一部の者による訴えの取下げに対する同意はその効力を生じない、とすべきであるとの私見を述べた。 第二に、同様の視点から「必要的共同訴訟における上訴と脱退」に関する研究を行い、平成29年11月に関西民事訴訟法研究会において報告のうえ脱稿した。これは次年度に大阪市立大学法学雑誌に公表される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、必要的共同訴訟の手続規律に関する具体的な解釈論を展開することができているため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、必要的共同訴訟人間の判決効について研究するために、その前提問題である第三者の訴訟参加について、比較法的な研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費にも書籍代にも使えない少額が残ったため。次年度において旅費または書籍代に使用する予定である。
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