2019年度は、筆者がここ10年ほどの間に科学研究費補助金の助成を受けて行ってきた必要的共同訴訟の研究を体系的にまとめる作業を行った。 まず、『必要的共同訴訟の研究』と題する論文集を、大阪市立大学法学叢書第65巻として有斐閣より出版した。本書では、共有者の共同訴訟の必要性に関する歴史的・比較法的な基礎研究の結果を用いて、必要的共同訴訟に関する主要論点について具体的解釈論を提示するものである。第1部「必要的共同訴訟の根拠と構造」、第2部「固有必要的共同訴訟における共有者の訴権保障」、および、第3部「必要的共同訴訟の手続規律」に分けて、これまで公表してきた論文を修正し、再整理を行った。 本科学研究費補助金の助成の受けて研究した事項、すなわち、必要的共同訴訟の手続規律と必要的共同訴訟人間の判決効に関しては、本書の第3部第2章に「固有必要的共同訴訟における訴えの取下げと脱退」を、第3部第3章に「必要的共同訴訟における上訴と脱退」を、第3部第4章に「必要的共同訴訟人間の参加的効力」を、2017年度および2018年度に公表した初出論文を修正した上で所収した。 その他、法学部生・法科大学院生向けのものではあるが、「類似必要的共同訴訟」および「上訴」と題する2つの論考を執筆し、上述の論文集に所収できなかった、必要的共同訴訟の手続規律に関する事項、とりわけ、必要的共同訴訟人の一部の者による自白の取り扱い、合一確定の必要性と不利益変更禁止の原則との関係について解説を行った。
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