研究課題/領域番号 |
17K03472
|
研究機関 | 尚美学園大学 |
研究代表者 |
崔 光日 尚美学園大学, 総合政策学部, 教授(移行) (60360880)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 監督義務者責任 / 韓国の監督者責任 / 中国の監護人責任 / 台湾の法定代理人責任 / 責任無能力者 / 制限行為能力者 / 行為無能力者 / 公平責任 |
研究実績の概要 |
今年度には、2018年8月24日から29日まで韓国(ソウル)を訪問し、9月2日から10日まで中国(北京、上海、福州)を訪問し、11月7日から11日まで台湾(台北)を訪問し、図書館などで文献資料を収集し、現地の研究者と本研究課題について検討を行い、2019年3月に日本で開催するシンポジウムのための打ち合わせを行った。 2019年3月30日に中国上海交通大学法学院の其木提副教授、台湾大学法律学院の陳忠五教授、韓国大法院の高鉄雄裁判研究官を招聘して、「21世紀不法行為法研究会」との共催で、「東アジアにおける監督義務者責任の現状と課題」をテーマとするシンポジウムを開催し、各国の監督義務者責任の現状について検討し、その問題点と課題を明らかにすることができた。3人の報告の題名は、「中国の監督義務者責任の現状と課題-侵権責任法第32条の解釈論を中心として」、「台湾における法定代理人責任の現状と課題」、「韓国における監督義務者責任の形成と展開」である。 現地調査とシンポジウムにおける検討を通じて、中国、韓国と台湾においては、成年後見人(中国の監護人、台湾の法定代理人)が被後見人(中国と台湾の行為無能力者、制限行為能力者)の加害行為に対して、損害賠償責任を負うことになっているが、その責任の当否、とりわけ親族以外の第三者後見人に責任を負わせるこのと可否ないし当否については、あまり検討されておらず、実務においても事例ほとんどないことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査とシンポジウムを通じて、中国、韓国と台湾の監督義務者責任の現状と問題点について、さらに深く理解し、今後の課題を明らかにすることができた。 中国の監護人責任(監督義務者責任)については、法文上は親族以外の監護人(後見人)も被監護人の加害行為に対して責任を負うことになっているが、実務においてはその実例がほとんどないことが確認できた。また、2020年3月に立法府(全国人民代表大会)において審議予定の民法典不法行為編草案においては、監護人責任について現行法の規定を踏襲し、改正が予定されてないことが分かった。 台湾の法定代理人責任(監督義務者責任)については、その重要な特徴である衡平責任の規定(187条の3項。同条1項と2項により法定代理人が責任を負わない場合でも、加害行為者と法定代理人および被害者の経済的状況を斟酌して、加害者側に損害賠償を命じることができる)は、ほとんど適用例がないことが確認できた。 韓国の監督者責任については、認知症の高齢者(責任無能力者)が加害行為を行った場合、後見人がいるときは、後見人が監督義務者として損害賠償責任を負い、後見人がいない(後見の審判を受けていない)ときは、配偶者、父母の順に監督義務者としての損害賠償責任を負うになる(判例、慣習、条理による)ことが分かった。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度である2019年度には、上記の研究成果(現状の確認と問題点・課題の把握)に基づいて、今まで収集した資料とシンポジウムにおける報告および質疑応答を精査し、残された課題をより明確にしたうえで、中国、韓国と台湾に赴いて、文献資料を収集し、現地の研究者と検討を行う。 最終年度には、実務における監督義務者責任の適用状況、とりわけ親族以外の第三者が後見人となる場合その監督義務者責任(有無)についての裁判例と学界の議論について調査研究を行う。 本研究の最終的な成果は、研究代表者が所属する学会または研究会において報告し、さらに精錬して、論文にまとめて公表する。
|