中国・韓国・台湾の現地調査とシンポジウム(2019年)を通じて、各国の監督義務者責任の特徴と問題点について確認することができた。 中国の監護人責任は、法文上は親族以外の監護人も被監護人の加害行為に対して責任を負うことになっているが、実務においてはその事例がほとんどないことが分かった。 台湾の法定代理人責任は、法(187条1項・2項)により法定代理人が免責できる場合であっても、加害行為者とその法定代理人および被害者の経済的状況を斟酌して、加害者側に賠償責任を命じることができるようになっている(同3項)が、その適用例はほとんどないことが分かった。 韓国においては、成年後見人が被後見人(認知症の高齢者など)の加害行為に対して責任を負うことになっているが、後見人がいない(後見の審判を受けていない)ときは、配偶者、父母の順に監督義務者としての責任を負うことになっていることが分かった。 新型コロナウイルス感染症拡大による外国の入国制限・禁止(韓国、台湾)と強制隔離措置(中国、最短2週間最長5週間)のため、最終年度に計画していた現地訪問調査を実施することができなかった。 各国の監督義務者責任実務の動向についての実態調査が充分にできなかったため、最終年度(研究期間延長)には新しい進展がほとんど得られず、研究期間中に所期の研究成果を出すことができなかったが、コロナ感染症が終息または緩和され、現地調査が可能になった場合には、未完成の研究を続けたいと思っている。
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