研究課題/領域番号 |
17K03479
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
尾崎 安央 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (30139498)
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研究分担者 |
尾形 祥 高崎経済大学, 経済学部, 准教授 (20515259)
山本 真知子 甲南大学, 法学部, 教授 (40350855)
川島 いづみ 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (50177672)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 学校法人ガバナンス |
研究実績の概要 |
研究会を東京と大阪で数度開催し、大学を設置している学校法人(大学法人)のガバナンスに対して会社法研究者の立場から検証する作業を行った。研究会の参加者は、毎回、本研究の分担者以外にも、従来から組織している「各種法人制度研究会」メンバーのほぼ全員であった。今年度は、比較する他の法人形態として「社会福祉法人」を取り上げ、また比較法研究として、英国の制度を掘り下げて検討した。 大学法人のガバナンスをめぐっては、文部科学省を中心として進行中の大学法人の「ガバナンスコード」案について、私立大学協会、私立大学連盟、大学監査協会の公表原案を素材に、これに文部科学省のレポートなどの公表文書を加えて比較検討を行い、それぞれの特徴や問題点などを整理し議論した。大学法人ガバナンスコードを策定するに当たりさらに検討すべき課題等が確認された。比較法的には、英国の法制度やガバナンスコードの意義・内容等の分析を行い、その問題点を整理するとともに、本研究の成果をもって日本版の実効性ある大学法人ガバナンスコードに向けた提言をするうえで参照すべき点の確認を行った。韓国で進行中の大学法人のガバナンスに関する研究報告もあり、問題意識の共通点と相違点を確認した。 今年度比較対象とした社会福祉法人については、複数の報告者からその法制度や実態等が詳細に紹介され、議論を行った。文部科学省の公表物では、参照すべき対象として、一般社団法人・一般財団法人に加え、社会福祉法人のガバナンスに言及されることが少なくないが、それらはほとんどが会社法の応用であることが明らかとなり、会社法の観点から大学法人ガバナンスを検討する本研究の方法の妥当性や有効性を改めて確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初よりも、最近、文部科学省などを中心に大学法人ガバナンスの議論の高まりがみられ、それらの動きを本研究に取り入れるために、各分担者における作業の範囲を拡大した。特に、近時、大学法人の自律性・自主性を高める方法として資産運用等を含む、いわゆる「攻めのガバナンス」が強調される傾向がみられ、また組織再編が模索されているようであるが、これらは、会社法学においても、近時、重要な課題とされるものと重なる視点であるとともに、組織再編法制については研究等の蓄積も多いことから、その点の検討も視野に入れ、大学法人ガバナンスの在り方の提言に、会社法の最先端の議論を参照すべく、足元の会社法での議論を整理し、その整理に基づいた検討を加えることとした。そのために、研究の進捗に若干の遅れが生じている。 他の法人形態との比較研究や、比較法的観点からの諸外国の大学の法人ガバナンスに関する考察はおおむね順調に進行しているが、米国については本年度に集中的に行うことが予定されているため、現時点では十分な成果が得られていない。北欧の財団法人規制からの示唆が報告され、その他の研究テーマについても研究報告が予定されている。最終年度の取りまとめに向かって、これらの方面からの研究成果が得られるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たり、研究成果の発表として、各分担者が執筆者となる論文を法律系雑誌に執筆する、短期連載(5~6回)を確保した。その原稿執筆のための研究会を開催することを計画している。 文部科学省の大学ガバナンス改革の議論において、法人組織の再編(合併等)や倒産処理も喫緊の課題となっている。これらは当初の本研究の対象としては意識されていなかったものであり、今年度の若干の検討によってもその問題を正面から取り上げるには準備不足の感があり、掘り下げた研究は将来の課題とせざるをえない。当面は、問題点を整理する作業を年度内に行いたいと考える。 当初から対象と考えていた大学TLOについては調査が遅れている。各TLOには、いわゆるブラックボックス的な部分が少なくなく、その総合的な考察は断念して、早稲田大学などのTLOを対象にして、その検証に集中し、問題点の所在を明確にしたい。 秋にかけて、米国の私立大学の、たとえば資産運用に係るガバナンスの実態についての調査を行う予定である。「攻めのガバナンス」については、リスクマネージメントは必須の前提条件であり、資産運用については、事業法人と同様のガバナンス体制が必要となるはずであるが、日本の学校法人において、その意識がどれほどかは不明である。資産運用の面で先行していると考えられている米国の状況をさらに実地調査して、文献等の資料ではよくわからない部分を確認したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が本務校での特別研究期間の取得がかない、2019年度後半に時間的余裕が生じたことから、その時期に米国だけでなく英国での実態調査を集中的に行う計画に変更したことから、そのための旅費等を繰り越したものである。現時点で、調査項目の精査、調査先のアポイントメントなどの作業を行っている。
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