本年度は、定期借地権の存続期間中に、借地権者が土地所有者からその土地を買い取ることができる旨の当事者間の特約について検討した。具体的には、UR都市機構が定期借地の買取制度を設けていることから、その概要を調査した上で、この制度が定期借地権の存続期間満了時における原状回復(借地上建物の収去と土地の更地化による土地の返還)にとってどのような意義を有するかを検討した。 同制度の特徴として、①借地権者本人だけでなく、借地権者の親族も土地買取りの申出をする資格を有すること、②土地の買取代金の支払方法として、即金払いだけでなく、UR都市機構の割賦制度による割賦払いも選択可能であることが挙げられる。①は、借地権者の子などが土地を買い取ることも認める点で、また、②は買取代金の支払の負担を軽減する点で、いずれも土地の買取を促進することを狙っている。そして、借地権者(またはその親族。以下同じ)が土地を買い取ると、買取った借地権者が土地の所有者になることによって定期借地権は消滅するので、定期借地権の存続期間満了時における原状回復(借地上建物の収去)の問題は生じない。したがって、上記①②は、借地権者による土地の買取を促進することを通じて、この問題をなるべく生じさせないことにつながっているといえる。 本研究全体を通じて、定期借地権における2024年問題(定期借地権の存続期間満了時における原状回復の問題)への対応として、次の点が明らかになった。(a)実務では当事者間の特約(土地の買取の特約など)によって対応しているが、(b)特約を結ぶだけでは不十分であり、特約に基づく対応が実際にとられるための条件整備も重要である。他方で、(c)仮に借地権者に原状回復をさせるとしても、地上権や定期建物賃貸借における制度設計・解釈論を参考にして、土地所有者・借地権者間の利害調整のあり方をさらに検討する余地がある。
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