本研究では、アメリカの傷害保険について歴史的分析および現状認識の双方を徹底することに主眼を置いた。そこで、アメリカにおける①判例を中心とした解釈論の展開、②論説・評論を中心とした解釈論の展開を徹底して行った。当初、保険会社の実務調査(policyの文言解釈、インタビューによる実際の運用調査等)によって、アメリカの実務的視点を把握することも予定していたが、実際にその作業を行ったところ、とくに保険実務家の間には、傷害保険の保険事故に関する理論的関心がほとんどないことが判明した。これは、疾病が少しでも関与すると、完全に無責とされるアメリカの傷害保険実務が関係しているように思われるが、今回の研究の範囲ではその原因まで特定するには至らなかった。 アメリカのこれらの作業により具体的には、傷害保険の保険事故概念については、accidental meansという語が生じさせた傷害保険解釈の混乱、その契約約款条項からの撤廃、そして現在におけるこの語への回帰志向等を、また、本来あるべき傷害保険事故と「疾病」との関係については、わが国の限定支払条項等に見られるような原因分属的思考の是非を、深く検証した。 一つの成果例として、わが国で中心的論題としての地位を占めてきた「外来性」について、以下のような結論を導き出した。
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