研究課題/領域番号 |
17K03485
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
松田 佳久 創価大学, 法学部, 教授 (40388913)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 物権的期待権 / 所有権留保 / 譲渡担保 |
研究実績の概要 |
1.研究成果のまとめを、大野武=宮﨑淳=花房博文編『藤井俊二先生古稀祝賀論文集 土地住宅の法理論と展開』(成文堂、2019年)の241頁~266頁に「わが国物権的期待権(私見)と物権的効力を伴わない物権的期待権」として掲載した。この論考では、概略次の内容である。 私見にいうわが国の物権的期待権は物権的効力を伴うが、これと比較されるべきドイツ物権的期待権は物権的効力を伴なっていない点を再確認した。また、物権的期待権にいう期待権は一義的に定まっているものであり、一般社会でいう事実上の期待権とは異なるものであることを示した。さらに、物権的期待権に関する研究成果の概要を示すとともに、これまで扱ってこなかった論点(物権的期待権と消滅時効との関係等)を検討した。
2.最二小判平30・12・7民集72・6・1044は、所有権留保と譲渡担保の交錯する事案において、所有権留保を優先した判決であり、本研究に重要な影響を及ぼす判例であるため、この判例に関する評釈研究を行い、創価法学49巻2号の59頁~100頁に、論考「所有権留保と譲渡担保の衝突-最二小判平30・12・7民集72・6・1044を題材として-」を掲載した。 内容は次のとおりである。 集合動産譲渡担保と所有権留保との衝突につき所有権的構成を判断して所有権留保を勝たせた最二小判平30・12・7民集72・6・1044を題材とし、期間を区切ってその間の原材料等の仕入れにつき所有権留保で行っていたこの判例の事例以外に様々な事案を想定し、その事案ごとに譲渡担保と所有権留保との優劣を私見として判断した。所有権留保の留保売主側の公示として動産債権譲渡特例法に仮登記制度を設けることも提案している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度は当初の計画どおりに、その成果を研究発表および創価法学等に公表することができた。 また、研究途上において、研究に影響を及ぼす最二小判平30・12・7民集72・6・1044に関する評釈も創価法学に掲載でき、研究計画にはない判例評釈も公表することができ、当初の計画以上に進展しているものといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果は創価法学といった紀要、法学雑誌、記念論文集等に公表してきたが、公表年度が数年にまたがっており、公表媒体もまちまちであるため、1冊の本にまとめるべく、これまでの論考の整理を行う。整理にあたっては、新しい引用文献が出ていれば新しい物に差し替えるなど加筆補正を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで公表してきた複数の研究成果をまとめて一冊の本にすべく、整理および加筆し補正を行うために、新たに購入する書籍やプリンター用インク等を購入のために使用する。 具体的に購入する書籍は決まっていないが、整理を進めるにあたり、必要な書籍が決まってくるものと思われる。
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