研究成果の一つは、M&A契約の解釈の在り方に関するものである。M&A契約の内容は、リスクやコストの緻密な計算に基づき定められているので、当事者の行った計算バランスを崩さないよう、裁判所がM&A契約を解釈する際は、契約の文言に現れていない事情は考慮すべきではない。もう一つは、「公正なM&Aの在り方に関する指針」に関するものである。指針の提案内容は、独立取締役(特別委員会)の努力によって対価の公正性の確保を図ろうとするものである。指針の提案する措置は、インセンティブ構造の違いから、MBOにおいては適切に機能しうるが、締出取引においては限定的な効果しか有しないと考えられる。
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