研究実績の概要 |
本研究計画に従い、第1に、欠陥責任を定める製造物責任法について、とくに比較法的視点から日本法の特色を明らかにし、生産者の民事責任についてドイツ法を中心に、各国レポートをとりまとめているKullmann=Pfister=Stoehr=Spindler(Edit.), Produzentenhaftung(Berlin/Germany, Erich Schmidt Verlag, 2017)において、日本の製造物責任法の概要、主な判例、ADR等の紛争処理手続きについて、欧文で公表した。 第2に、福島原発事故賠償にかかる集団訴訟について、2017年に出された各地裁判決(前橋、千葉、福島生業)を分析、検討した。前橋地裁判決については「法律時報」において公表した上で、9月以降に出された残り2件の判決を踏まえた損害論をめぐる今後の課題と展望については、慰謝料の問題に焦点をあてシンポジウム等で報告した他、日本評論社より刊行を予定している『原発事故被害回復の法と政策』の中で公表を予定している。 第3に、取引的不法行為(とくに消費者取引および金融商品取引にからむ不法行為)についても判例の整理・検討を行った上で理論的な検討を進めた。第4に、2017年7月にドイツにてようやく遺族慰謝料請求権導入法が可決されたことから、その意義をヨーロッパにおける法の平準化とのかかわりにおいて、近時のドイツ国内の議論を参考に整理し、近く公表を予定している。第5に、従来の人身損害賠償の問題をめぐっては、交通事故訴訟を中心にいくつかの研究成果を公表することができた。隣接領域(とくに社会保障法および保険法)との調整問題については引き続き検討を進める。
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