研究課題
本研究は、現代において著作権制度がどのようにあるべきかという問題意識のもと、図書館情報学の知見を踏まえたうえで、図書館やアーカイブの法的な位置づけや意義・機能を明らかにし、図書館・アーカイブに関する著作権法の解釈・立法への示唆を提示することを目的とするものである。最終年度においては、図書館に関する著作権法改正の動きがあったため、研究計画を変更し、主に法改正に関する情報収集や検討を行った。この改正は、新型コロナウィルス感染症流行の影響により、図書館が休館等を余儀なくされたことから、インターネットを通じた図書館資料へのアクセスについてのニーズが顕在化したとして、絶版等資料へのアクセスの容易化を図り、また図書館資料の送信サービスを可能とするために、著作権法31条(図書館に関する権利制限規定)を見直すものである。改正に向けた検討が令和2年に集中して行われ、令和3年5月に改正法案が可決・成立している。インターネットが発達した社会において、図書館として求められる機能を発揮しつつ、権利者の利益を確保することが課題となっており、今回の改正ではインターネットを通じた図書館資料の一定の提供を可能としながらも、その範囲を制限したり、権利者に補償金を還流させることでバランスを図ろうとの試みがなされているが、具体的な制度設計や運用においては課題が多いことも明らかとなった。研究期間全体を通じて、著作権法と図書館の問題に関わる調査を進めたものの、関連する分野が幅広く、想定より調査に時間を要したため、当初計画における具体的な論点の検討を十分に行うには至らなかった。それでも、本研究課題にかかる近年の法改正等の動向を把握し、図書館と著作権法に関する基礎的な調査や検討を一定程度進めることができた。本研究課題の成果をもとに、引き続き図書館と著作権法に関する問題の検討を進めていく予定である。
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法学セミナー
巻: 749号 ページ: 28-33
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巻: 別冊ジュリスト第248号 ページ: 172-173
令和元年度 重要判例解説(ジュリスト臨時増刊1544号)
巻: ジュリスト臨時増刊1544 ページ: 262-263