本研究の最終年度である本年度は、新型コロナウイルス感染症拡大により移動制限等が続く中、海外出張等の当初計画を大幅に見直し、デジタル化への対応を進め、本研究の全体的な成果のとりまとめと成果発表に重点を置いた。主な成果として、以下の2つが挙げられる。 第1に、同感染症拡大に伴い、AI・IoTをはじめとする情報・データ・アルゴリズム・プラットフォーム関連技術が社会変革を促し、グローバルな規模でのデジタル統治の覇権争いが顕在化している状況を指摘した。その上で、言論・表現・情報の自由や公開性・透明性に関する法の原理と制度デザインの在り方をめぐり、日米欧の古典的議論及び近年の個別事例等の分析から引き出される示唆として、本研究の今後の展望につながる、次の点を明らかにした。すなわち、(1)デジタル化が進む社会における人権保障と権力統制・監視機能を実効的に担保するためには、情報法の価値原理と制度デザインの新たな構想が求められていること、そして、(2)特に今後の日本のデジタル社会秩序形成の文脈では、情報権力分立――すなわち、統治権力における抑制・均衡を担う主体の一層の多様化・分散化・国際化等を通じた、統治構造そのものの透明化・民主化――が要請されること、である(研究発表欄の「情報権力分立」及び「権力統制主体としてのマスメディアの機能と課題」を参照)。 第2に、Privacy Studies Journal創刊記念のオンライン・カンファレンス(2021年4月26日~28日)にSession Chairとして参加するなど、国際ジャーナル創刊のための活動に編集委員会の一員として携わった。この活動を通じて、次世代の革新的技術とプライバシーに関する学際的な議論動向等を把握し、国際的な研究連携ネットワークを拡充することができた(後掲の国際共同研究欄及び備考欄のコペンハーゲン大学の関連サイトを参照)。
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