1999年頃に医療安全や医療事故などが社会に注目されるようになって以降、司法による医療への介入が医療安全を妨げるという議論がなされてきた。医療過誤に業務上過失致死傷罪は適用されるべきではないといった立場も、とくに医療側から表明される一方で、そのような立法は認められないとの立場を示す司法との間には溝があった。医療と司法の間の意見の不一致のある現状に対し、実際に、医療事故調査が裁判とどのような関係にあるのかを示し、両者の協調関係を探ろうとしたことに本研究の社会的意義がある。まだ制度開始から数年で検証するには十分ではないが、医療事故調査制度があることで医療にも司法にも良好な影響があることが示される。
|