研究課題/領域番号 |
17K03506
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小島 立 九州大学, 法学研究院, 准教授 (00323626)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地域資源 / 知的財産法 / 地域内循環型経済 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、平成29年度に続き、「地域内循環型経済」についての理解を深める取り組みを行った。地域資源の創出と利活用においては、当該地域内での内需拡大と資本の循環が必要であるが、その一方で、地域がイニシアティブを取って取引を行える構造が構築できるのであれば、外部からのリソースの獲得を否定する必要はない(例えば、地域産品を百貨店や大規模なモールに「行商」するような場合)。そのような地域と外部とのインターフェイスが生じる際には、交渉の際の「武器」としての知的財産権の重要性が増すはずである。 ①農業:新品種の開発と普及において、各都道府県の農業試験場と農業協同組合が果たしてきた役割は大きい。地域資源を「ブランド化」し、他産地との差別化を行なう試みが行われる際のアクターの関わり方や、当該アクターの間での資源(リソース)の管理のあり方について検討した。 ②工芸・デザイン:工芸の世界では、伝統的な技術を現代社会に即したプロダクトに転用する試みもなされている。また、日本の工芸の職人と海外のデザイナーがコラボレーションして新商品の開発や販路の拡大を目指す動きなどもある。工芸がその世界だけに閉じたものではなく、外部のデザイナーなどと協働する場合には、そのインターフェイスにおいて、異なる「ものの考え方」を調整する必要が生じるため、本年度は、近時の工芸における様々なアクターの関わり合いについて分析を行う。 ③建築・ランドスケープ:建築の領域においても、例えば、火山灰であるシラスを活用してコンクリートを作る取り組みなど、「地域素材」の利活用を推進しようという動きが見られるこのような地域素材の活用に向けた取り組みが、単に「モノ」を生み出すだけではなく、地域における人的なネットワークに与える影響などについても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主に検討対象としている3つの領域についての調査を行うとともに、理論構築に向けてた準備も進んでいると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
「地域内循環型経済」についての理解を深めるに当たり、「共有型経済」の理論モデルが与える影響について考察する。そして、本研究の最終年度に当たることから、これまでの理論的検討を踏まえて、地域資源の創出と利活用において知的財産法が果たすべき役割について、一定の見通しを示すことを目指す。 本年度は、平成29年度と平成30年度に、主に前述の3領域で行ってきた知見を総合する。具体的には、①農業、②工芸・デザイン、③建築・ランドスケープにまたがるような事例を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成31年1月から3月に巡検を実施しようとしていたところ、著作権法改正に関連する政治情勢に対応することを余儀なくされ、その予定をキャンセルせざるを得なかった。平成31年度の早い時期に巡検を行うことを予定している。巡検それ自体は延期になったものの、研究の進捗状況には影響はない。
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