研究課題/領域番号 |
17K03509
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
遠井 朗子 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (70438365)
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研究分担者 |
村上 裕一 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (50647039)
眞田 康弘 早稲田大学, 地域・地域間研究機構, 客員主任研究員(研究院客員准教授) (70572684)
鶴田 順 明治学院大学, 法学部, 准教授 (90524281)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CITES / 規範の変容 / 持続可能な利用 / エピステミック・コミュニティ / サメ / 象牙取引 |
研究実績の概要 |
2022年11月に開催されたCoP19に参加して審議を傍聴し、サイドイベントへの参加及び関係者との意見交換により情報収集を行った。調査結果は研究協力者であるJWCS主催のウェビナー及びニューズレターへの投稿により公表した。CoP19におけるメジロザメ科の一括掲載は、海産種規制におけるモメンタムである。そこで、2023年3月、IUCNサメ専門家グループの科学者を招聘して「CITESにおけるサメの保全と持続可能な利用」に関する公開ワークショップを開催し、附属書掲載の根拠となる科学的評価、掲載の意義、実施の枠組み及び日本の対応について検討を行った。これらの調査と検討により、メジロザメ科の一括掲載が採択された背景には、IUCNサメ専門家グループの各国代表への積極的な働きかけがあり、これらの科学者集団がエピステミック・コミュニティとして交渉の帰結に影響を及ぼすことに成功を収めたと捉えられることが明らかとなった。日本は、FAOを介して対抗言説の形成を試みたが、明確な科学的論拠を示すことができず、他国の賛同を得ることができなかった。また、象牙の国内市場閉鎖勧告と関連し、実質的には日本のみを対象とする制度的な監視メカニズムの援用が認められ、野生生物犯罪に対処するための国際協力として正当化されるとの見解が支持された。この点についても、日本は象牙取引の根絶を求めるアドヴォカシー・コアリションとの対抗言説の形成に失敗し、国際的に孤立しつつある。このように、近年、原産国・地域が科学者ネットワークと協力関係を築き、「持続可能な利用」を標ぼうして規制を推進する動きがみられるが、日本はこうした動向から距離をおき、相対的に影響力を低下させている。その背景としては、国内における不透明な意思決定、「規制の虜」、国内実施における関係省庁の権限の配分の失敗があると思われるが、この点は事案毎に精査する必要がある。
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備考 |
眞田康弘(2022)「水棲種の附属書掲載提案における議論」JWCS通信、97号、3-6頁。 遠井朗子(2022)「CITESにおける『持続可能な利用』という言説の行方と二つの多様性について」JWCS通信、97号、7-11頁。真田康弘(2022)「闇で流れる「ウナギロンダリング」土用の丑の日に未来はあるか」『ITmeidaビジネスオンライン』online magazine
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