本年度は、宗教団体の運営における透明性とガバナンスについての基礎的な検討を中心に行った。わが国における宗教団体の情報開示のあり方や公益活動への関わりなどに関する基本的な資料の収集を行うとともに、翌年度に行われるトルコでの現地調査に備えて、わが国における宗教団体の財産管理における現状と課題の描出に焦点を絞って検討を重ねた。その中で、わが国の宗教団体における情報開示や公益活動においては、全体として十分な積極性が見られないということが認められた。ただ、この背景には、国民が持つわが国独自の宗教団体との距離感の問題が背景にあると言え、一概に宗教団体だけの問題であるとも言えない。ただ、こうした状況を打開するためにも、情報の開示は重要な問題であり、社会における宗教の重要な役割を考え、積極的が求められることに変わりはないと考えられる。その上でわが国の宗教行政上、十分に情報公開や公益活動を行っている団体について、評価をしつつ、そうでない団体に対しては、一定の厳しい態度を取ることも排除するべきではないと考える。その過程においては、宗教団体と行政の関わりという点から「政教分離」をどう捉えるかという点も大きな問題であり、この点についても引き続き検討を重ねるとともに、トルコでの現地調査の結果と対比するための基礎的材料を集積することができた。こうした点から本研究の研究目的のうち「団体運営の透明性」という点から十分な知見を得ることができた。
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