研究課題/領域番号 |
17K03512
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
田上 麻衣子 専修大学, 法学部, 教授 (80408020)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 伝統的知識 / TK / 生物多様性条約 / 名古屋議定書 |
研究実績の概要 |
平成29年度は4か年計画の初年度にあたるため、国内外の動向及び研究状況の把握・整理を行った。 平成29年5月22日、我が国は「生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書(名古屋議定書)」の受諾書の寄託を行い、同議定書を締結した(平成29年8月20日に我が国について効力発生)。そして、その国内実施のために、「遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する指針(ABS指針)」を作成・公布した。また、世界知的所有権機関(WIPO)でも、伝統的知識の保護に関する議論、文書の策定が進められた。さらに、生物多様性条約(CBD)関連では、伝統的知識に関し、第8条(j)項及び関連条項に関するアドホック公開作業部会(8j-WG)が開催され、伝統的知識の還元に関するガイドラインの起草が行われた。 こうした国内外の動きを受けて、関連文献や国際機関の文書・記録等を基に論点や主張の整理を行うとともに、関係会合への参加や関係機関等との議論を通じて、国際的な交渉事項や実務上の問題点について検討を行った。また、研究会・講演会等で関係機関や研究者に対し、研究開発の実施上の注意喚起を行った。 この他、伝統的知識の保護に関し、中国が国内法の起草を進めていることから、その草案を翻訳して検討するとともに、国内の関係者とその影響等について検討を行った。 これらの研究の実施により、本課題に取り組む上での全体像を描くとともに、論点を網羅的にカバーし、その相互関係を整理することができた。また、成果については適宜公表した。その上で、次年度以降の実施計画の再検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、適宜国内外の動きの把握・分析を行い、大きな進展が見られた国際機関における議論については、重要なものを論文としてまとめ公表した。また、我が国における名古屋議定書の国内実施に関しては、関係者と意見交換を積極的に行い、論点の抽出や課題の整理などを行うとともに、関係機関・研究者に注意喚起を行った。 また、我が国の名古屋議定書批准・国内実施を受けて、平成30年度以降の実施計画を見直して、方向性を定めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、国内外の動向及び研究状況の把握・整理と、関係機関・研究者との意見交換・ヒアリング調査の作業を継続する。その上で、我が国を含む名古屋議定書締約国の同議定書の実施状況を分析しつつ、本年度予定されているWIPOの伝統的知識等に関連した政府間会合及びCBDの締約国会議における議論の進展をフォローし、それらの成果・課題を踏まえて、中間とりまとめを行う予定である。 加えて、中国で進められている国内法の整備状況・実施状況を調査し、関係者との議論を通じて、我が国への影響、対策等について検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)CBD関連の会合への参加のための旅費として計上していた予算について、専門家として派遣されたことから不要となり、別途、研究遂行上必要となった国際文書の翻訳費として使用した結果、差額が生じた。 (使用計画)次年度の文献等購読費に充てる予定である。
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