研究課題/領域番号 |
17K03512
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
田上 麻衣子 専修大学, 法学部, 教授 (80408020)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 伝統知 / 遺伝資源 / 伝統的知識 / 伝統的文化表現 / 生物多様性 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、前年度に引き続き、国内外の関連分野の研究成果の収集、整理及び分析を行うとともに、国内の関係機関や企業等へのヒアリング調査や意見交換を行った。法制化をめぐる動きに関しては、国内における伝統知の保護に関連した法律や制度の改正状況について文献調査及びフィールド調査を行った。また、11月には生物多様性条約(CBD)第14回締約国会議(COP14)が開催されたため、CBD第8条(j)項及び関連条項の実施に関する文書の内容把握、議論の状況等の分析を実施した。今回のCOP14では、「生物多様性の保全及び持続可能な利用に関連する伝統的知識の還元に関する任意ガイドライン」と「第8条(j)項及び関連条項の文脈における関連する重要な用語及び概念の用語集」が採択されており、CBD第8条(j)項関連のこれまでのCBDにおける取組において一区切りを迎えた。これらの調査・研究を通じて得られた成果については、年度末に取りまとめて論考として公表した。この他、WIPOにおける伝統的知識等に関する法的文書をめぐる議論についてもフォローし、企業関係者・実務家等と課題や解決策について検討した。この他、予定していた中国における中医薬や文化遺産の保護等に関する法整備・実施の状況についての調査も行った。 平成30年度に得られた成果を基に、現時点での課題・今後予定される国内外の動きなどを整理し、中間まとめを行うとともに、次年度の研究実施に係る方針・計画の再検討を行った。国内外で様々な法的文書の作成が進んだ一年であったため、今後、その実施状況について注視していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外の文献調査及びヒアリング調査・意見交換、フィールド調査を予定通り実施することができ、現在の課題と対策状況について整理することができた。また、国内外で伝統知の保護に関連した法的文書の作成が進んだことから、それに対応して、調査を実施し、成果を公表することができた。さらに、国際的な交渉の場では、利益配分の対象などの拡大を強く求める途上国等の主張を受けて、論点が多様化・複雑化してきていることから、当初の予定では想定されていなかった範囲についても、内容に取り組めるように、計画の見直しも実施した。これらのことから、本研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の中間まとめ・計画再検討を受けて、令和元年度は国内外の法的文書の実施状況の把握及び課題整理に主眼を置き、その進展にあわせて研究を実施する。具体的には、わが国における名古屋議定書の実施状況なども踏まえつつ、伝統知の利用・保護等に関し、運用上の問題点の検証を行う。また、CBDで作成されたガイドライン等の影響や課題などの分析を行う。この他、現在WIPOで検討が続いている伝統的知識等に関する法的文書について、条約化の動き/国内法整備の動きにおける問題点を分析する。この他、国内外の文献等の調査や関係機関等との意見交換は継続する。加えて、オーストラリアやカナダなど、先住民の保護の歴史や経験を有する国に関する海外調査、意見交換等も予定している。
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