研究課題/領域番号 |
17K03515
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
今村 哲也 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任准教授 (70398931)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ICT活用教育 / コンテンツ / 著作権 / 教育の情報化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,教育過程での著作権等の権利処理問題に関して現行制度の改善や新たな提案を行うための総合的研究を行うことにある。初年度は,今回の研究の前提となる(1)「教育の過程でのコンテンツ利用に際して生じる権利関係をめぐる現状の整理」を行うこととし,教育の過程でのコンテンツ利用に際して生じる権利関係に関する最新の文献や情報と従前収集した資料を分析することとした。具体的な研究経過は,以下の通りである。 (1)資料収集・分析:資料収集を継続しつつ,教育の過程でのコンテンツ利用に際して生じる権利関係をめぐる現状を整理し,ICT活用教育の際の権利処理に際して顕在化した問題点を指摘して,次年度以降の研究調査の方向性をより明らかにした。顕在化した問題点としては,(a)著作権法35条の法改正後の具体的な法の運用の在り方(「著作権者の利益を不当に害すること」にならない範囲,補償金の受け皿となる管理団体の在り方や徴収・分配の仕組み等),(b)教育関係の利用分野における権利制限については,教育分野のフィールドとアクターの特殊性に配慮した規範形成が必要であるといった点を確認した。これらの顕在化した問題点を踏まえて,次年度においては,類似の制度を有する諸外国での運用の状況を分析することの他に,法の解釈を明確化するためのガイドラインの策定といったソフトローの活用の意義・方法について分析が必要であると考えるに至った。 (2)海外調査:英国の研究協力者から情報を取得するとともに,著作権法を巡る動きについて複数の有識者が解説するカンファレンスに参加することにより,効率よく情報を収集した。 (3)中間報告:以上の研究の成果については,幾つかの媒体において知見を明らかにし,政策立案や学究活動の議論の糧となるよう努めた。なお,研究成果については,進捗状況に応じて,所属する学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,教育過程での著作権等の権利処理問題に関して現行制度の改善や新たな提案を行うための総合的研究を行うことにある。具体的には,教育過程でのコンテンツ利用について,(1)権利関係を巡る現状の整理,(2)諸外国の法制度の状況,(3)利用推進に向けた権利処理円滑化方策について,関係者への聞取りや諸外国の制度状況の調査を通して,課題解決に向けた解釈論・立法論を展開する。初年度は,主として(1)の論点を整理することを目標とした。自己評価としては,学会等での報告(下記(a))や海外調査,実態調査(下記(b)),関連する調査事業への参加や研究で得た知見を踏まえた原稿の提出(下記(c))などによって,おおむね順調に進展していると思われる。 (a)大学学習資源コンソーシアム主催のフォーラム「著作権法改正後の教育現場における著作物利用環境を展望する」において「教育機関における著作物利用の円滑化に向けた提言」と題する講演を行い,研究で得た知見を提供した。また,日本知財学会で「教育の過程におけるコンテンツ利用と権利制限」と題する報告をした。 (b)弘前大学教育学部附属小学校において,授業におけるICT活用教育の現場を訪問する機会を得て,デジタル教科書の活用の現場のみならず,ICTが初等教育の様々な場面で活用されている実態を把握した。 (c)文化庁の業務委託として公益社団法人著作権情報センターがとりまとめた『著作権分野におけるソフトローに関する調査研究報告書』において「著作権法の運用におけるソフトローの意義と必要性」と題する原稿を作成し,著作権法35条についてもソフトローとの関係を分析をした。株式会社博報堂が文化庁委託事業として実施した「ICT活用教育に係る諸外国の補償金制度及びライセンシング環境等に関する調査研究」に設けられた検討委員会に委員として参加し,調査事業を通して各種の知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に文献資料の分析や海外調査により収集した研究成果を踏まえて, 諸外国の法制度の状況について,我が国の制度との関係を配慮しながら検討し,制度の運用面での示唆を提供するとともに,著作物の種類や実務の慣行に配慮しながらICT活用教育でのコンテンツ利用の円滑化方策として最適なモデルを提案し(たとえば,ガイドラインの策定といったソフトローの活用等),あわせて課題解決に向けた運用面での提言や法の解釈論を展開することが主たる作業となる(特に、平成30年著作権法改正後の35条に関して)。以下の計画・方法により,研究を実施する予定である。 (1)資料収集・分析:初年度に収集した資料の分析の他,引き続き,追加的な資料収集とそれらの分析を行う。この際,引き続き,海外の研究協力者からの支援を仰ぐ予定である。なお,資料収集を効率よく行うため,適宜アルバイトを活用する予定である。 (2)海外調査:海外調査では,初年度の調査を通して意見交換を行った研究者との間で論点に関する意見交換を行う(英国に出張)。出張時,機会があれば本研究に関連する課題を扱う研究会等に参加して関連情報を収集する。 (3)中間報告:中間整理として,論文または研究ノート等の資料の形式でまとめて,専門誌等に投稿する予定である。なお,所属する学会等で,報告することを計画する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に海外出張による調査を予定していたが、日程が大学等における重要な用務の日程と重なったため、次年度に行うこととした。また、アルバイトの人件費が必要な作業については、スケジュールの都合が合わない部分があったため、次年度に集中的に行うことにした。
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