本研究は、未だ必ずしも学術的な理論の確立に至っていない法曹倫理という学問的分野について理論的体系化を目指すため、その中核として位置付けられる守秘義務および利益相反の理論について基礎的な研究を行った。 守秘義務については、いずれの法域においても、その根拠として依頼者の保護と共に弁護士の独立した専門職としての職務遂行があることを確認した。また、利益相反について、これまで日本においてはその趣旨として、①依頼者の利益の保護、②弁護士の適切な職務の遂行、③弁護士の品位保持、の3点が説明されてきたが、欧米ではより精緻化した議論の中で、依頼者の秘密の保護が主要な論点となっていることを確認した。
|