研究課題/領域番号 |
17K03519
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
村山 淳子 西南学院大学, 法学部, 教授 (90350420)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 主観的感覚 / 多様性 / ライフ・スタイル / 医療 / 多面性 / 美容医療 / 脆弱な消費者 / 美容整形 |
研究実績の概要 |
医療において、人の多様なライフ・スタイルは、どのように保護されるのか。本研究は、人の多様性の保護という視点から、ライフ・スタイル型医療(患者の主観的感覚の満足を主たる目的とする医療)を、以下の3つのアプローチから考察することを目的とするものである。本年度は、わが国の学説・裁判例を基本的な素材として、3つのアプローチが有するそれぞれのテーマについて独立した考察を行い、当該テーマについての解釈論の到達点をあきらかにする作業を行った。 第1のアプローチ(ライフ・スタイル型医療も「医療」であるというアプローチ)は、医療の限界領域において、身体の自己処分の限界点をどこで画するのかというテーマを有する。学際的議論の分析を通じ、医師の裁量から患者の自己決定へ、また内容規制から手続的救済へという、わが国の法秩序全体が共有する価値判断をみいだすことができた。 第2のアプローチ(ライフ・スタイル型医療は消費者取引であるというアプローチ)は、消費者としての患者の経済的選択はどう保護されるのかをテーマとする。多面的な考察の結果、経済的な情報格差、および身体に対する主観的なこだわりゆえの脆弱な消費者に対する医師の職業倫理に根拠づけられる、医師の経済的な説明義務に解決の可能性をみいだすことができた。 第3のアプローチ(ライフ・スタイル型医療は人の主観的感覚に基づく結果の達成を目的とする役務であるというアプローチ)は、医療において人の主観的感覚はいかにどこまで救済されるのかという普遍性のあるテーマを有している。過去の論争との連続性の中で検討した結果、主観的感覚に基づく結果の達成可能性に関する説明義務と、原状回復的な損害賠償という2つの法解釈の組み合わせが、きわめて有効に機能することが判明した。 いずれの研究成果も、研究成果の領域間交流という、学際的可能性を有している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
準備期間を長くとった研究課題であるため、全体像が早期によく見通せていたことから、資料収集や考察手順において、失敗ややり直しをすることなく、順調に研究作業を進めることができた。加えて、研究作業の過程で、ライフ・スタイル型医療の体系化という新たな課題への取り組みも始めた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究作業が順調に進められたことを生かし、研究の質と精度を上げること、また視野を拡げることに努めたい。具体的には、対象医療を拡げ、ライフ・スタイル型医療の体系化という課題の考察を並行して進める。また、人の多様性の保護という意味でより先進した段階にあるドイツ法を中心とした外国法の研究も引き続き進めてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に購入を予定していた書籍が予定通りに刊行されなかったり、図書館で借りることができたことによる。次年度は、洋書の購入と、研究会や講演会への参加による情報収集・意見交換を頻繁に実施することを予定している。
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