研究課題/領域番号 |
17K03519
|
研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
村山 淳子 西南学院大学, 法学部, 教授 (90350420)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 主観的感覚 / 多様性 / ライフ・スタイル / 医療 / 多面性 / 美容医療 / 消費者 / ドイツ |
研究実績の概要 |
医療において、人の多様なライフ・スタイルは、どのように保護されるのか。本研究は、人の多様性の保護という視点から、ライフ・スタイル型医療(患者の主観的感覚の満足を主たる目的とする医療)を、次の3つのアプローチから考察することを目的とする。すなわち、第1に、ライフ・スタイル型医療も「医療」であるというアプローチである。第2に、ライフ・スタイル型医療は消費者取引であるというアプローチである。第3に、ライフ・スタイル型医療は人の主観的感覚に基づく結果の達成を目的とする役務であるというアプローチである。 本年度は、日本法に関する前年度の研究成果をふまえ、ドイツ法に関する研究に取り組んだ。なかでも、第2アプローチについて、ドイツで判例により生成し、2013年の医療契約の法典化で条文上の根拠をもつに至った医師(医療提供者)の経済的情報提供義務を素材として、医療における患者の経済的期待の保護の論理を考察した。本研究は、医療と経済に関する日本法の解釈論を進展させる重要な意義を有する。本研究の成果は、来年度中に紀要論文として公表予定である。ほかの2つのアプローチについても、ドイツ法の資料を収集し通読中である。 さらに、長年取り組んできた、患者の権利の法制化に関する研究についても、ドイツの患者の権利法(医療契約法)を素材として、最終報告にあたる論文を執筆し、大学紀要にて公表した。本研究の成果は、再来年度の学会報告に応募中である。と同時に、本研究の基礎資料である、ドイツの患者の権利法(医療契約法)の連邦政府法案とその理由の翻訳を公表用に仕上げて大学紀要にて連載中である。加えて、ドイツの医療情報法について、最新の法状況をふまえた総説的な論文を脱稿することができた。これらは、本課題を包摂するより大きな研究にあたり、本課題の深化・進展に大きく寄与するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、準備期間を長くとった研究課題であるため、全体像が早期によく見通せており、情報収集や考察手順において、スムーズに進めることができた。また、前年度の日本法研究を順調に進められたために、本年度は、日本法研究におけるドイツ法研究の位置づけを正確に見極めつつ、研究を進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
ドイツ法を中心とした外国法の研究を引き続き実施し、研究の質を高めてゆきたい。また、各アプローチの相互関係や、ライフ・スタイル型医療の体系化をあきらかにする作業にも力を入れたい。最終年度であることを意識し、研究成果を1つにとりまとめる方向で研究を推進してゆく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は多くの書籍の購入を予定していたが、和書の刊行が比較的少なく、雑誌論文のコピーで済んだことが大きな理由である。最終年度にあたる来年度には、成果公表や情報交換に力を入れ、学会および研究会にいっそう積極的に出席することを予定している。
|