1.医療において、人の多様なライフ・スタイルは、どのように保護されるのか。本研究は、人の多様性の保護という視点から、ライフ・スタイル型医療(患者の主観的感覚の満足を主たる目的とする医療のこと)を、3つのアプローチから考察することを目的とする(各アプローチについては過年度の研究実績の概要参照)。昨年度までで、本課題を構成する主要要素について、あきらかにすることができた。 2.延長後の本年度は、昨年度実施することのできなかった、外国法、そして他領域の情報を広く収集し、視野を拡大し、研究内容を相対化して、研究成果を学界において客観的に位置づけるための作業を行った。他領域との関係をあきらかにする作業の一環として、不法行為法から分化する過程にある領域である環境法・消費者法・医事法の3領域を素材に、それらが共有する不法行為法の領域分化の構造を、「逸脱的な領域分化」と「調和的・併存的な領域分化」の2種類に区分してあきらかにした。この作業は、研究成果の、とくに国内法での位置づけに深く寄与するものである。また、ドイツにおける医師の経済的情報提供義務を、医療の経済的結果を知る患者の必要への法的応答という視点からあきらかにする研究を完成させた。この作業は、とくに第2アプローチの研究成果を、ドイツ法研究を通じて相対化する意味をもつものである。なお、過年度の研究成果の一部である「適格な法とは何か──ドイツ医療契約法の法的視点」を比較法学会で報告予定である。
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