研究課題/領域番号 |
17K03528
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
近藤 康史 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (00323238)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | イギリス政治 / 比較政治 / 政党システム / 政党組織 / 二大政党制 / 保守党 |
研究実績の概要 |
2020年度においては、これまでの研究枠組を拡大しつつ、1990年代以降のイギリス労働党の変化を主要な分析対処としながら、それがイギリスの政党システム・政党間対立に及ぼした影響について、検討した。 これまでの研究で依拠してきた、Hanspeter Kriesiらによって提起されている経済的対立と文化的対立への対立軸の二次元化の視点に加え、特に社会民主主義政党の多数派形成における「階級形成」と「階級連合」のジレンマという理論的枠組みを加えることによって、イギリス労働党の変化を、ドイツ社会民主党やスウェーデン社会民主労働党等、他のヨーロッパの社会民主主義政党との比較も交えながら分析した。一般に 1990年代のヨーロッパ社会民主主義政党は、文化的争点のセイリエンスを高めることで「階級連合」を追求し、そのことによって多数派形成に成功していくケースが多いが、イギリス労働党もその性格が強いことについて、明らかにした。 その上で、ただし特に2010年以降においては、この文化的争点へのシフトによって、従来の「階級形成」の方が困難になっており、そのことが社会民主主義政党の低迷につながっている点を示した。ただしイギリス労働党に関しては、2015年以後において、国有化などを主張することで経済的争点の観点からの多数派形成を目指し、一定程度の成果を得た面もあるが、ただしそれは確固たるものとはなっておらず、「階級形成」と「階級連合」のジレンマを克服するものとは依然としてなり得ていない点について明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来であれば、本研究は今年度が最終年度となり、下記の理由から研究が完成には至らず、再度の研究期間の延長を行うこととなった。 ここまで政党間対立の構図の変化については検討が当初の計画通りに進んでいる。しかし、本研究課題が完成するためには、各政党がそのような立場の変更をどのような政党内の動態に基づいて生み出したのかについての検討が必要であり、そのために、各政党の担当者に対するインタビュー調査が予定されていた。しかしながら2020年度もまたCovid-19の影響によって海外調査を行うことができず、結果として予定したインタビュー調査を行うことが困難となった。そのためこれらの調査に関しては、次年度に持ち越さざるを得なくなった。 また、Covid-19以外にも、本研究の開始時には予期していなかった、保守党・労働党の両党首が交代するという状況も生じたが、研究期間を延長することによって、これらの状況に対応した形で研究を進展させることが可能であると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに、理論枠組の形成と政党間対立の構図の変化については、一定の進捗が得られている。今後は、これらを土台としながら、またEU離脱以後の保守党・労働党の変化も視野に入れながら、残りの作業を行なっていくことになる。 その中でも、労働党に関しては研究が一定程度進捗したが、保守党については特にEU離脱以後の政策的ポジションの変化や、政党組織的変化について検討していくことが、課題となる、今後の研究は、特にこの点に焦点を当てることになるだろう。 しかし、海外調査に基づいて進展させることは今年度も困難である可能性があるため、代替策として、オンラインによるインタビュー調査や、ウェブ上における文書資料の探索・収集によって行うことを前提として研究を推進させる。そのため、基本的には物品費として基金を使用することを念頭におく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度中に、イギリスの政党本部等でのインタビュー調査を中心とした海外調査を予定していたが、Covid-19の状況によりそれが困難となった。したがって、主にこの海外調査に充てる予定だった費用が、次年度使用額となっている。 この費用に関しては、2021年度においては、オンライン調査に切り替えるための機材や、文献・資料調査のための図書といった形で使用することとし、従って物品費として用いる。
|