研究課題/領域番号 |
17K03528
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
近藤 康史 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (00323238)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イギリス政治 / 比較政治 / 政党システム / 政党組織 / 二大政党制 |
研究実績の概要 |
2021年度については、これまでの研究枠組を踏襲しつつ、1990年代以降のイギリス労働党の変化について、特に福祉国家政策に焦点を当てて分析した。加えて、2010年以降の保守党政権についても、やはり福祉国家政策に焦点を当てて検討し、労働党と保守党との間での政党間対立構造の変化について、一定の結論を得た。 これまで本研究の主要な枠組の一つとしてきた、経済的対立と文化的対立への対立軸の二次元化について、イギリスの保守党と労働党の福祉国家政策の変化に焦点を当てて、位置づける試みを行った。先行研究において、この対立軸の二次元化をイギリス政治の枠組みとする場合、主にEUとの関係を文化的対立の中心に据える場合が多いが、本研究では、福祉国家政策に適用して分析する試みを行っている。その結果、保守党と労働党との政治的対立構造が、経済と文化とを横断する形で再編成される点について論じた。これらの分析に関しては、『日英教育研究フォーラム』所収の論文の一部分として発表した。また、その続編となる論文についても現在執筆しており、次年度に共著書の一部として公表される予定である。 また今年度においては、上記に加えて、EU離脱後のスコットランドの動向についても、主にスコットランド国民党に焦点を当てて検討を進めた。加えて、イギリスにおける野党の役割について、イギリスの民主主義制度との関係から分析する試みも行っている。この分析も、イギリスにおける政党政治の特徴の一端と、その要因について解明するもので、本研究の業績として執筆を進めており、来年度には公表される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、今年度が最終年度となる予定であったが、下記の理由から研究が完成に至らず、研究期間の延長を行うこととなった。 ここまで政党間対立の構図の変化については検討が当初の予定通り進んでいる。しかし、そういった構図の変化を生み出した各政党内での動態の変化については、各政党の担当者へのインタビュー調査などが必要であるが、2021年度もCovid-19の影響によって海外調査を行うことができず、実現しなかった。 そのため今年度は、若干の方向転換を行い、日本でも入手しやすい、各政党の政策理念関係の文書等を中心に分析を進め、政党間対立の構図の変化を抽出する作業を行なった。したがって、研究としての進捗は生み出されている状況であるが、当初の目標通りには進んでおらず、やや遅れているという評価である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、理論枠組についてはほぼ完成した状況にあり、本研究の目的である政党間対立の構図の変化の分析に関しても、一定の進捗が進んでいる。しかし、研究期間中に保守党・労働党ともに党首が交代したこともあり、党首交代後の動向も見据えながら、今後の研究を進めていく。とりわけ、両党の政党組織的な変化について分析することが、今後の主なテーマになるだろう。 ただし、その点を進めるためには、政党担当者に対するインタビュー調査といった、現地に赴いての調査が必要となる。しかし次年度も、Covid-19やウクライナ戦争の影響で、海外調査が困難な状況が続くと予想されることから、これらについてはオンラインによる調査に切り替えることを前提に、進めていくことにしたい。そのため、旅費として計上していた部分を、オンライン調査のための物品費として用いることを念頭に置いている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度中に、イギリスの政党担当者に対するインタビュー調査や資料収集を中心とした海外調査を行いたいと考えていたが、Covid-19の影響により、今年度もそれが不可能となり、次年度使用額が生じた。 この費用については、2022年度については、オンラインによる調査のための物品費や、国内機関における調査のための国内旅費、また、文献調査のための費用として使用する。
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