冷戦終結後の日本とイタリアの両国において、中央、地方においてポピュリズム型のリーダーやパーソナル・パーティ型の政治勢力が台頭している。日本においては小泉純一郎首相、橋下徹大阪市長、河村たかし名古屋市長などを主な検討対象とし、イタリアにおいては、北部同盟のボッシ、その後継である同盟のサルヴィーニ、フォルツァ・イタリアのベルルスコーニ、五つ星運動のグリッロ、民主党のレンツィなどを主な対象として理論的、実証的検討を行った。また、2018年のイタリア総選挙、2019年のヨーロッパ議会選挙に際しては現地調査を行った。 研究の最大の成果は、こうしたポピュリズムが単に民主主義への脅威として片づけられるべき現象ではなく、既成政党、既成民主主義体制への批判を通じて民主主義を活性化する側面も持っていることが確認できたことである。その背景にある、政治の国際化、国家の複雑性増大、マスコミの構造変化、伝統的クリーヴィジの衰退などは多くの民主主義国に共通するだけに、日伊以外の国でも見られる現象ではあるが、とりわけイタリアにおいては従来の左右二大政党が共に消滅、ないし根本的変貌を遂げただけに(日本では社会党は消滅したが自民党は持続している)、特に顕著に出現したと考えられる。 本研究で重視したもう一つの論点は、ポピュリズムが与党となった場合に統治能力を発揮しうるかどうかであった。これには否定的な見解が多いが、日本における橋下徹の事例のように高い統治能力を示す事例も確認できた。イタリアにおいても、ベルルスコーニ首相やレンツィ首相は相当程度の統治能力を示したし、同盟や五つ星運動も一定期間政権を担当した実績を持つ。 たしかに、ポピュリズムの急進的、運動的側面と統治能力とは矛盾を孕むが一定の成功も示されており、それを踏まえて、ポピュリズムを現代的政治現象として正面から位置付けるべきだというのが本研究の結論である。
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