研究課題
本年度は昨年度に引き続き、政府・中央銀行の政策対応について、理論的な分析を行う準備として、近年の政治経済学の研究動向を把握する作業を行った。具体的には、重要文献の収集・整理を行い、それを読み込む作業を進めていった。 その成果として、政治経済学の教科書(共著)の執筆に加わり、財政政策、金融政策、コーポレート・ガバナンスの章を担当して、各分野の研究動向についてまとめたことが挙げられる。この教科書は2020年度中に公刊される予定である。また本年度は、本研究課題に関する研究の一環として、先進国との比較の観点から日本の財政赤字の政治的原因について研究を行い、日本比較政治学会にて報告を行った。この研究については、さらに発展させたうえで、単著として公刊する予定である。さらに昨年度に引き続き本年度も、政府の危機対応という観点から、近年の日本の電力・エネルギー政策、とりわけ原子力政策についての研究を行い、論文を公刊した。これは本研究課題と直接関係するわけではないのだが、政府の金融危機対応(金融機関の救済や金融システムの安定化のための公的資金の投入)や政府債務危機対応(増税や歳出削減などの財政緊縮政策)といった、世論の強い反対を受けるものの必要とされる政策対応を検討するうえで、大いに参照されるべき事例と考えたため、本研究と並行して研究を進めることにした。くわえて本年度は、経済政策の形成過程を検討するうえで重要となる、官僚の執務知識と政官関係についての研究も行い、論文を公刊した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は政治経済学の重要文献の収集・整理を行い、それを読み込むことで一定の理解を得るとともに、その理論動向を整理することができた。また、本研究の一環である日本の財政赤字の研究も進展させ、日本比較政治学会で報告を行った。くわえて危機時における政府対応の比較研究という観点から、電力・エネルギー政策の研究も並行して行い、論文を公刊するといった成果を挙げた。
来年度は研究の最終年であるため、これまでの研究をまとめて、論文として公刊することを目指している。
本年度は海外出張を予定していたものの、勤務校での公務が多忙のため、海外出張を中止した。また資料の収集・整理のために学生をアルバイト雇用することを予定していたものの、アルバイトを行ってくれる学生を見つけることができなかったため、アルバイト雇用を行わなかった。次年度使用額については、本年度予定していた海外出張とアルバイト雇用を行うことで、消費する予定である。
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『問題と研究』
巻: 48(3) ページ: 39-80
10.30391/ISJ.201909_48(3).0002
『阪大法学』
巻: 69(3・4) ページ: 191-218