4年間にわたり、経済停滞の時代における先進国の経済政策について研究を進めた。第一に、近年の欧米における政治経済学の研究動向を把握するため、重要文献を収集し、それを読み込み、議論を整理する作業を進めた。その成果として、政治経済学の教科書(共著)の執筆に加わり、財政政策、金融政策、コーポレート・ガバナンスの章を担当して、各分野の研究動向についてまとめた。 第二に、先進国との比較の観点から日本の財政赤字の政治的原因について研究を行った。この研究については、日本比較政治学会で報告を行ったほか、それを発展させて論文として公刊した。この研究は、さらに発展させたうえで、単著として公刊する予定である。 第三に、政府の危機対応という観点から、近年の日本の電力・エネルギー政策、とりわけ原子力政策についての研究を行い、単著および論文を公刊した。これは本研究課題と直接関係するわけではないのだが、政府の金融危機対応(金融機関の救済や金融システム安定化のための公的資金の投入)や政府債務危機対応(増税や歳出削減などの財政緊縮政策)といった、世論の強い反対を受けるものの必要とされる政策対応を検討するうえで、大いに参照されるべき事例と考えたため、本研究と並行して研究を進めることにした。 第四に、経済政策の形成過程を検討するうえで重要となる、官僚の執務知識と政官関係についての研究も行い、論文を公刊した。 これらの研究を通じて、経済停滞の時代における先進国の経済政策の特徴と、それ以前の時代からの変容について、一定程度、明らかにできたと考える。
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