本研究は、現代のヨーロッパにおける移民を背景に持つ市民(以下、帰化市民)の政治行動を明らかにし、とりわけその要因をホスト社会側の国民意識との関連から考察するものである。帰化市民の投票行動については「移民に寛容な中道左派政党に対する帰化市民の支持」というパターンが指摘されている。オーストリアの事例でも、確かにトルコ系の帰化市民にはそうした様子が観察されたが、セルビア系の帰化市民の間では、移民排斥政党とされる自由党への支持が非常に高かった。帰化市民の政治行動には階級的利害だけでなく、アイデンティティ・ポリティクスの一面もあり、社会イメージへの自己同一化も見て取れた。
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