研究実績の概要 |
本研究の目的は、ピューリタン革命期(1640-60 年)の共和主義思想の動態と特質を、同時代の国家論と教会論の相互関係の視角から明らかにすることにある。 この目的のために本年度は、研究初年度として、本研究全体の基礎となる共和主義思想のコンテキストの解明に向けて、とりわけ当時の教会体制の変容過程についての基礎文献・資料の精読に研究の大きな比重を割いた。具体的には以下の2つの項目とその文献の検討を行った。(1)主教制廃止後の国教会制度を検討するために、1643年に設置された議会の諮問機関であるウェストミンスター神学者会議についての次の資料を検討した。Chad Van Dixhoorn, David F. Wright,Mark A. Garcia, Joel A. Halcomb and Inga Jones, eds., The Minutes and Papers of the Westminster Assembly, 1643-1653, Oxford U. P., 2012. (2)O・クロムウェルの護国卿体制の教会制度の理念と制度に大きな役割を果たしたと言われるJ・オーウェンの著作集(Complete Works of John Owen, 16 vols., Banner of Truth, 1996)を検討した。 また、上記の検討と併せて、当時の代表的な共和主義者であるジョン・ストリーター(John Streater)の運動と理念の分析を行った。これについての研究成果の一部は、後続の「研究発表」の項に記載したとおり、第12回日本ピューリタニズム学会研究大会での研究報告と学会誌『ピューリタニズム研究』への投稿論文(査読あり)という形で公表することができた。 なお、今年度の研究を遂行するにあたっては、本研究に深くかかわる政治思想学会(5月)と社会思想史学会(11月)の研究大会に出席して、関連諸分野の研究者との意見交換を行うことで、知見を深めた。
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