研究課題/領域番号 |
17K03546
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
大澤 麦 首都大学東京, 法学政治学研究科, 教授 (30306378)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 共和主義 / イギリス革命 / ピューリタニズム / 立憲主義 / クロムウェル / ハリントン / ミルトン / 自由主義 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ピューリタン革命期(1640-60年)の共和主義思想の動態と特質を、同時代の国家論と教会論の相互関係の視角から明らかにすることにある。前年度においては同時代の国家教会制度とその基本理念を中心に検討を進めたことから、とくに今年度は共和主義の国家理論(コモンウェルス論)に焦点をあてることが基本方針であった。具体的には、前年度において着手した共和主義者ジョン・ストリーター(John Streater)の研究をさらに深く掘り下げることを中軸に据えた。これによって、以下の2つの知見を得ることができた。 (1)ストリーターは、従来、質的に異なるものと認識されてきた1640年代の急進主義と1650年代の共和主義とを結びつける思想家としばしば見なされてきたものの、イギリスにおいてすらその十分な検討が怠られてきた。本研究はクロムウェルの護国卿体制の設立原理の中にこそ、そうしたストリーターの思想の核心を読み解く鍵があることを発見した。 (2)ストリーターはジョン・ミルトン、マーチャモント・ニーダム、ジェームズ・ハリントンら17世紀イギリス共和主義の重鎮たちの陰に隠れた矮小な思想家と見られることが多かった。しかし、本研究ではストリーターこそ当時の共和主義の総体を解明する基軸になる思想家であることを明らかにした。 なお、今年度は奉職する首都大学東京からサバティカル・リーヴを許されたため、イギリスのオックスフォード大学セント・エドマンド・ホール(カレッジ)および歴史学部に1年間籍を置いて研究に従事することができた。わけても同大学のブレア・ウォーデン教授その他と意見交換を行いつつ、同大学のボードリアン図書館の膨大な資料を利用して知見を深めることができたことは極めて意義深かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は上記「研究実績の概要」にも記したとおり、本研究の主題である共和主義の全体像を把握する見通しを得ることができた。 また、オックスフォード大学での在外研究のおかげで、本研究に関わる文献・資料のほぼすべてを入手することができた。また同大学の専門の研究者との意見交換によって、これまでの研究の問題点を修正することができた。 以上述べたことから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度および今年度に遂行した研究を下地にして、以下の2つの項目について重点的に取り組むことで、本研究全体を完結させる。 (1)昨年度において行ったピューリタン革命期の教会制度とその理念についてさらに検討を加えて、その全体像を解明する。とくに国王処刑前のウェストミンスター神学者会議の構想とクロムウェル護国卿体制下の教会制度とを対比し、その関係を明確にする。 (2)今年度重点的に遂行したジョン・ストリーター研究を軸にして、共和主義のカノンと目される著作を残したマーチャモント・ニーダム、ジョン・ミルトン、ジェームズ・ハリントンの検討と再評価を行うことで当時の共和主義の国家論全体の基本性格を解明する。そのうえで、(1)の教会論との関係を明らかにして、本研究全体を総括する。 なお、以上の研究の途上において得られる個別的な研究成果は、学会発表や個別論文において逐次公表していくことを、可能な限り実行していきたい。
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