本研究の目的は、ピューリタン革命期(1640-60年)の共和主義思想の動態と特質を、同時代の国家論と教会論の相互関係の視角から明らかにすることにある。研究期間の最終年度である今年度は、研究全体の総括を睨みながら、これまで最も検討が手薄であった以下の2点に重点を置いて研究を進め、それぞれ一定の成果をあげることができた。 (1)ピューリタン革命の最終局面である共和制(護国卿体制)崩壊期における共和主義思想の様態と意味を、当時において最も体系的な共和主義理論を構築したJ・ハリントンの政治思想を手掛かりに考察した。王政復古を促す時代思潮に抗する形で自らの共和制モデルの樹立を目指したハリントンは、軍事クーデタによって成立した現下の共和制同様、権力の起源を「剣の力」に求めるデ・ファクト理論に頼らざるを得なかったのであった。この点の詳細は2019年度日本政治学会研究大会で報告した。 (2)共和制イングランドの教会論として、O・クロムウェルがピューリタン神学者J・オーウェンの助言を受けて構築した国教会(National Church)構想の意味を共和主義思想との関連で検討した。わけても、政府の監督下に置かれつつも、ピューリタン諸派による自律的な各個教会の連合を特徴とする制度の中で、「良心の自由」が国家と教会との相互関係の中でどのように実現されようとしたかを考察した。詳細は2020年6月20日に青山学院大学で開催される日本ピューリタニズム学会第15回研究大会で(日程と場所に関しては新型コロナウィルス感染症拡大の影響で変更される可能性がある)「クロムウェル護国卿体制における『良心の自由』」という題目で報告することが決まっている。 その他、共和主義に関する貴重な資料である『アリストテレス「政治学」第1巻に関する歴史的、政治学的、哲学的考察』全11号(1654年)の紹介文を学会誌上に公表した。
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